オムロンの「卓球ロボット」が示す制御技術のポテンシャル:CEATEC2017(2/2 ページ)
オムロンはCEATEC JAPAN 2017開幕前日にメイン展示となる卓球ロボット「フォルフェウス」の進化と技術について紹介した。
M&Aがあったから実現した「サーブ機能」
卓球ロボット「フォルフェウス」は、オムロンが保有する一般制御機器を組み合わせて実現したことを紹介したが、サーブ機能は垂直多関節ロボット「Viper650」でボールをトスする。これをメインのラケットスイングを行うパラレルリンクロボットと100分の1秒で同期制御して実現している。
ただ、オムロンでは従来産業用ロボットアームは展開していなかった。2015年9月に米国の産業用ロボットメーカーだったAdept Technologyを買収し2016年3月からオムロン製品として産業用ロボットの展開を開始(※1)。こうした背景があって、今回新たにサーブ機能をフォルフェウスに組み込むことができたというわけだ。
(※1)関連記事:オムロンがついに産業用ロボットを発売、制御機器との連携機能も
スマッシュ機能については、前回モデルから搭載している人体センサーを活用し、時系列ディープラーニングを使って解析することで実現した。「センシング&コントロール+Think」の「Think」領域の強化だ。時系列ディープラーニング技術は、オムロンが展開するモノづくり現場のIoTサービス基盤「i-BELT」の中核として位置付けるAI搭載マシンオートメーションコントローラーなどにも搭載されている技術で、今回この技術を活用することで「スマッシュの予兆」を読み取り、対応することに成功したという。ただスマッシュの予兆に対して反応してしまうため「フェイントには弱い。スマッシュを打ちそうで打たないという場合は対応できない」(オムロン 代表取締役 執行役員専務 CTO 兼 技術・知財本部長の宮田喜一郎氏)としている。
これらのサーブ機能やスマッシュ対応機能にしても、既にオムロンが一般販売している製品によって実現されているというのが特徴である。
宮田氏は「これらのセンシング領域、コントロール領域、そして『Think』を支える技術群を幅広く自前で開発しているのがオムロンの強みである。課題解決型へと世の中がシフトする中、さまざまな領域で要求レベルが上がっている。この中で幅広い製品を抱えているからこそ解決できることがある。卓球ロボットには、こうしたオムロンの総合力を示すという意味もある」と述べている。
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