PLM雌伏の10年、これからは飛躍の10年となるか:MONOist10周年特別寄稿(3/4 ページ)
2000年代前半から製造ITツール業界で話題になり始めた「PLM」。しかし、MONOistが2007年に開設してからこの10年間、PLMの実際の運用状況はPDMの延長線にすぎなかったかもしれない。しかし、IoTの登場により、PLMは真の価値を生み出す段階に入りつつある。
PLMという概念の広がりは踊り場に
2017年現在を考えますと、PLMという概念の広がりは踊り場に来ています。しかしここ数年の有力な動向、例えば産業用IoT(IIoT:Industrial Internet of things)、インダストリー4.0などの変革の概念、またビッグデータ解析や人工知能などの革新技術によって、PLMも大きく変わろうとしています。それらをふまえてPLMの今後の10年について、どんな事柄が求められるかを考えてみましょう。
インダストリー4.0では、生産現場やサービスの現場に焦点が当たり、その中でもセンシングによるデータの集積と分析から価値を創造することが語られる傾向にあります。そもそも分析した結果から、バリューチェーンの上でより良い価値を創造するためには、製品ライフサイクルの各所において、デジタルモデルに対して有効にシミュレーションが実行される必要があります。
このようなデジタルモデルはデジタル設計ツールで作成される場合もあれば、現実世界をデータとして取り込むことから定義される場合もありますが、いずれにせよデジタルモデルを生成/管理する基盤はPLMです。従ってインダストリー4.0を実現するためには、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)などの製造実行のプロセスのみならず、その上流や下流のプロセスのデジタル化とそれらのつながりが重要となり、そのためにPLMが果たす役割は大きいといえます。
このデジタルモデルですが、製品の企画/開発のあらゆるフェーズに発現します。詳細設計段階の部品形状観点のデジタルモデルが3D CAD/ビュワーデータなどであることは自明ですが、昨今の製品の電子化により、電子回路、ワイヤハーネスモデルなども存在しますし、製品の一部/全部の振る舞いを検討する制御モデル、加えて「モデル」という言葉からは離れますが、組み込みソフトウェアもデジタルモデルの一部として考慮されます。
すなわち、製品を構成する要素が全てデジタル化の対象となります。領域が異なると版数管理と管理単位もさまざまですが、それらを柔軟に統合管理できることがPLMの必須条件となります。
これらの異なる領域(メカ、エレキ、制御、ソフトウェア)のデジタルモデルを統合することで、製品としての性能のシミュレーションと性能最適化が実現されます。この場合、複数領域が同一プラットフォームでシミュレーションされる必要があるため、個々の物理特性(力、電気、熱、流量など)を総合的に扱える1Dシミュレーションのフレームワークが利用されます。上流の1Dシミュレーションモデル、より下流の領域ごとのデジタルモデルシミュレーションモデル、かつそれらの相互の関連性まで管理することが今後必要となってきます。
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