「うしらせ」で牛の起立困難状態をスマートフォンに通知、独自LPWAを採用:製造業IoT
ソニーエンジニアリングは、肥育牛に装着するセンサー端末で牛の起立困難状態を検知し、肥育農家のスマートフォンにその状態を通知する「うしらせ」を開発した。2018年1月の発売を予定している。
ソニーエンジニアリングは2017年8月30日、肥育牛に装着するセンサー端末(牛端末)で牛の起立困難状態を検知し、肥育農家のスマートフォンにその状態を通知するシステム「うしらせ」を開発したと発表した。200頭飼養規模の農家の場合、初年度の導入コストは概算で100万円未満となる。発売は2018年1月の予定だ。
同システムは、牛端末で牛の横臥状態を検知し、牛舎内に設置する基地局へ情報を送信。そこからクラウドシステムへと送信し、起立困難状態発生時にユーザーのスマートフォンアプリへ通知する。ユーザーとして、肥育牛を100頭以上の規模で飼養する中/大規模肥育農家を想定している。
牛舎環境に適した独自のLPWA(Low Power Wide Area)無線技術を採用。同社が開発したコンサートライブ用の無線制御型LEDライトシステムで使用する920MHz帯における無線技術とそのノウハウを活用し、通信機(基地局)1台で一般的な大きさの牛舎(100×30m、300頭程度を想定)の情報を収集できる。
起立困難検知には、全国農業協同組合連合会の協力により、農場での実証実験などで精度を検証。牛の起立困難検知に特化したウェアラブル端末を開発した。牛が一定時間の横臥状態に陥ると、スマートフォンのアプリが警告音を発して警告画面を表示し、夜間や外出先でも確認が可能だ。
製品は、牛端末セット(USE-WS01/J)、基地局セット(USE-BS01/J)、Android/iOSに対応したスマートフォンアプリで構成される。牛端末セット、基地局セットはオープン価格、スマートフォンアプリは無料だ。
肥育業界では、肥育後期に肥育牛が起立困難となり、肺が圧迫されて窒息死する死亡事故が年間1〜2%発生している。1頭あたりの損害額は約100万円になるが、現状は牛舎の見回りなどで対応するしかなく、夜間の監視などが農家の負担となっていた。
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