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ダイハツ「ミライース」、37.0km/lを超えられる新型エンジンをなぜ諦めた?ミライース 開発者インタビュー(3/4 ページ)

先頃フルモデルチェンジされたダイハツ工業の軽自動車「ミライース」。開発陣に量産までのいきさつを聞くことができた。驚異の軽量化と安全装備の充実を両立しながら、価格を抑える工夫はどのようにして生まれたのか。そこにはミライースを利用するユーザーへの思いにあふれていた。

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ボディー鋼板の構成を塗り分けて表示したモノコック。リアゲート開口部は、接合剛性を高めることで、樹脂製バックドアの採用を実現した(クリックして拡大)

高根氏 80kgもの車両の軽量化のうち、30kgの削減に貢献したのが樹脂パーツの採用だ。バックドアをはじめ、フロントフェンダーや燃料タンクなどさまざまな樹脂パーツをミライース以外にも複数車種に展開してきた実績がある。生産技術で目新しいものはあるのだろうか。

南出氏 生産技術でいえば、樹脂バックドアを内製化しましたので、物流も含めてかなり効率化できました。

高根氏 他にも部品の内製化を進めており、トルクコンバーター(トルコン)でも始めていると聞いた。

南出氏 トルコン内部のブレードの設計は3年くらい前から内製化していますね。どういう形状がいいのか、検討を重ねています。どういう技術を手の内化したらいいのか、品質や採算の面からいろいろ試行錯誤しています。何でもかんでも内製化すればいいというものでもありませんし、あまりに内製化率を高めてしまうと自由度が利きません。

高根氏 車体骨格の軽量化では、スーパーハイテンを惜しげもなく使っている。

南出氏 確かに部材のコストは上昇するんですが、その分軽量化は図れますし、補強材を減らせるので、トータルコストの中に押し込むという考えで導入しました。まったく、やりくりの塊のようなクルマなんです。しかも、部品点数を減らしてコストダウンも達成しているんですよ。

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Aピラーの構造。内側にスーパーハイテンを使い、スカットル部分には補強材も組み込んでいる。さらにAピラー外板にもハイテン材を使うことで剛性を高め、補強材の削減やボディー外板の薄板化などで軽量化を実現(クリックして拡大)

高根氏 しかし「浜松のメーカー」がJC08モード燃費37.0km/l(リットル)を達成して、それに追い付け、追い越せという意見は出なかったのだろうか。

南出氏 そういう声は当然、ありましたよ。ぶっちゃけていいますと、試作エンジンも作りました。ライバルを超える燃費も実現しました。でも、方向を変えたんです。

 実際にお客さんの声を聞いて回って、燃費、燃費っていうけどカタログ燃費通りには出ないのを皆さんが分かってきたことを感じました。特に燃費値が35km/lクラスの燃費になると、1〜2km/l変わったってそんなことは気にしない。満タンで何km走るかっていうのは気にするけれど、カタログ燃費はそれほど魅力として響いていないっていうのが分かったんです。

 新型車でエンジンを作り直して搭載するとなると、それなりの投資が必要になります。そうなれば車両価格にそれは上乗せしなくてはならなくなる。そういった中で、安全性能を気にする方が多くなっておりまして、特に年配のユーザーさんが多いものですから、「毎日の運転で安心して乗れるクルマが欲しいです」という声をたくさんいただくようになったんです。

高根氏 それが今のテレビCMに反映されている訳だ。安全性や使い勝手(鍵が大きいのは大阪らしいジョークだが)を重視しているのが分かりやすく伝わってくる。

南出氏 これまでの低価格と低燃費というてんびんの上にもう1つ、安全という要素を乗せて全体のトータルバランスを考えようと。決して宗旨替えした訳ではないんです。

高根氏 試作エンジンを量産化するコストを、安全装備に回したという見方もできそうだ。

南出氏 確かに、そういう見方もできますね。初代ミライースの時から採用している「予算制」という考え方があるんです。これは販売価格を決めて、そこから利益を差し引いて、そうするとクルマの製造原価が決まってきます。そうなると燃費にどこまで予算を振りますか、ということになるんです。あまり燃費性能にお金を注ぎ込むと、コーナーセンサーなどは標準装備にできません。

高根氏 コーナーセンサーと後方誤発進抑制機能の超音波センサーを兼用するユニークな考えは、どのように生まれたのだろうか。

南出氏 開発も終盤に差し掛かっていたんですが、コストが問題になっていて。センサーを用途ごとに分けるのであればすぐに作れたんですけど、そうするとセンサーが2倍必要になります。それは先ほどいったようにコストの面で難しいと。そこで超音波センサーの制御を工夫して、0.5秒ごとに中距離用と近距離用の超音波を交互に発するようにさせたんです。この制御プログラムの開発が大変でした。でもハードウェアは変えずに実現させることができました。とにかくシビアな開発でした。

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