「世界で最も現実的なインダストリー4.0」を目指すオムロンの勝算(後編):スマートファクトリー(2/2 ページ)
オムロンはFA事業戦略を発表し、同社が考えるモノづくり革新のコンセプト「i-Automation」について紹介するとともに、これらのコンセプトを実践している同社草津工場の取り組みを紹介した。後編ではオムロン草津工場におけるIoT活用の実践の様子をお伝えする。
組み立て生産の自動化も推進
実装ラインのデータ活用と合わせて、組み立てセルラインの見える化や自動化も推進する。組み立て生産は基本的には人手で行う場合が多く、作業の見える化や自動化が難しい領域である。オムロンでは、国内工場に先駆けて、人手生産が多かった中国の上海工場での生産ラインの見える化を推進。組み立て生産工程内で使用する生産補助機器や治具をSysmac NJシリーズでつなぎ、作業の着手時や終了時にこれらの治具などで認識させることで、ワークの通過情報を取れるようにしている。
これらの組み立てセルラインの見える化への取り組みを草津工場にも活用。草津工場でのセル生産ラインでも、それぞれのワークの通過時間などを確認できるようにした。さらに、自動化なども推進している。
水野氏は「生産改善にずっと携わってきた経験からいうと、すぐに自動化に頼るのではなく無駄を徹底的に省いた後に自動化へと向かうことが必要だと考えるが、人手の確保などがどんどん難しくなってきているのは事実。自動化できる作業は自動化していくことが求められている」と状況について語っている。
自動化に向けては、「からくり」なども活用し省エネルギー化や低コスト化なども推進。さらに、自動化設備に合わせるのではなく基本的には人が使うトレイや治具などをそのまま利用できるようにしたことがポイントである。例えば、部品供給を自動化する装置なども、トレイなどは人が使うトレイをそのまま利用でき、従来の使い済みトレイの回収装置などもそのまま利用することができる。
水野氏は「部品供給などもできる限り専用供給治具やフィーダーなどは使いたくない。人が使うようなトレイで供給できるものが理想である。それを実現するためにさまざまな工夫を重ねた」と自動化への取り組みについて述べている。
ロボット活用のポイントは「速すぎない」
組み立てにロボットを活用する取り組みなども進めている。ただ、ポイントは「速すぎない」ことだという。
水野氏は「ロボットによる自動化だけを考えれば、専用の治具や専用の器具などを導入すれば、その作業の生産速度そのものは大きく高めることができる。しかし、それが製品の生産性を高めることかというとそうではない。『売れるものを売れる速度で作る』ということが生産改善の基本だ。そういう意味では、現在草津工場で生産している超多品種少量生産の制御機器の生産には、それほど高性能で高速なロボットは必要ない。安くて人の作業をそのまま置き換えることができるようなロボットが求められている。現在は、草津工場内で独自で開発したシステムを使っているが、さらに低コストで汎用的なロボットや自動化ツールなどが求められている」と述べている。
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