設計者の働き方改革に必要なのはクラウドPLM、キヤノンITSとPTCがサービス提供:製造ITニュース
キヤノンITソリューションズとPTCジャパンは、製造業の設計・開発業務に携わる技術者が、在宅でも安全かつ安心にリモートで作業を行える「スマートPLMサポートサービス」の提供を始める。同サービスの鍵になっているのは、PTCのクラウドPLM「PTC PLM Cloud」だ。
キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)とPTCジャパンは2017年8月24日、製造業の設計・開発業務に携わる技術者が、在宅でも安全かつ安心にリモートで作業を行える「スマートPLMサポートサービス」の提供を同年9月上旬に始めると発表した。国内製造業で深刻化する人材不足に対応すべく、設計スキルを持つ人材が、働く場所にとらわれずにいつでもどこでも設計・開発業務を行えるようにする、設計者の働き方改革を推進するサービスとなっている。
スマートPLMサポートサービスは、PTCのクラウドベースPLM「PTC PLM Cloud」、キヤノンITSのクラウド型テレワークシステム「テレワークサポーター」とエンジニアリングサービスから構成されている。在宅勤務する設計者は、使い慣れた3D CADツールを使って設計作業を行いながら、製品の企画、製造、出荷、販売、保守までの情報を一元管理できるPTC PLM Cloudに設計データを保存することになる。基本的にクラウドベースのサービスになるので、在宅勤務する設計者のローカルPCに設計データは残らない仕組みだ。
ローカルPCに設計データを残さないことだけが目的であれば、クラウドベースの3D CADツールを使ってもいいはずだ。しかし「それは単に設計データをクラウドに保存しているだけで、設計開発チームの他のメンバーとシームレスに連携できているとはいえない。PLMによる情報の一元管理があってこそ、チーム設計をも可能とする設計者の働き方改革をはじめて実現できる。そこで重要な役割を果たすのが、クラウドベースのPLMであるPTC PLM Cloudだ」(キヤノンITS)という。
PTC PLM Cloudは、PTCのPLMツール「Windchill」をベースとするクラウドPLMだ。国内ではWindchillを採用する企業が多く、現時点でPTC PLM Cloudはあまり採用されていないものの、世界全体では150万以上のライセンスが購入されている。Windchillの販売パートナーであるキヤノンITSは、独自開発したウィザード形式の「PLM簡単スターターキット」を用意しており、これに同社のエンジニアリングサービスを組み合わせることで、迅速にPLMを立ち上げられるという。
テレワークサポーターは、既に採用実績もあるテレワークシステムだ。キヤノングループが得意とする画像処理技術を基にした顔認識により、本人確認や在席、離席確認、作業画面ののぞき込みや成りすましの検知を行える。企業側がテレワークで懸念する、設計データへの不正アクセスを抑制できる仕組みになっているという。また、さまざまなデータに基づく生産性の客観的な評価や、作業日報の自動出力などの機能も備えている。
「あらためてPLMのメリットを知っていただければ」
スマートPLMサポートサービスの主な対象顧客は中堅の製造業になる。「2010年ごろにPLMを導入してみたものの使いこなせていない企業は多い。PLMが、完成した設計データを置いておくだけのファイルサーバになってしまいっていることもある。そこで、働き方改革によって人材不足を補うシステムの構想要素としてPLMをクラウドで導入していただき、その上であらためてPLMのメリットを知っていただければと考えている」(キヤノンITS)という。
サービスの導入から立ち上げまでの期間は1〜3カ月が目安となる。Windchillユーザーであれば、オンプレミスのWindchillと、クラウドのPTC PLM Cloudを組み合わせたハイブリッド運用も可能だとしている。
価格(税別)は、PTC PLM Cloudの基本ライセンス(15ユーザー)、テレワークサポーターの基本ライセンス(5ユーザー)、初期環境セットアップなどを含めたエンジニアリングサービスをセットにして1年間で1200万円から。「今回のスマートPLMサポートサービスの投入により、当社のPLMの案件数を前年比で3倍に伸ばしたい」(キヤノンITS)としている。
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