Apex Grizzlyは任意断面の構造解析と線形座屈解析に対応、大規模アセンブリ―解析機能も強化:CAEニュース
エムエスシーソフトウェアの新製品「MSC Apex Grizzly」では「断面力センサー」と線形座屈解析が追加された。周波数応答解析の機能と併せて使えば、荷重経路解析の結果表示も可能だ。
エムエスシーソフトウェアは同社のCAEプラットフォーム「MSC Apex」(Apex)の第7世代「Grizzly」の機能の詳細について明かした。同製品では構造解析機能の強化と大規模アセンブリ構造物における設計検討の効率化に取り組んだ。Grizzlyは日本名でハイイログマ。同製品は2017年6月に概要が発表されている。
解析の新機能として、「断面力センサー」を追加した。解析モデルの任意の位置に断面作成して構造解析ができる。要素を横切る形でカットができ、接点境界の制限もない。マニピュレータ(操作アイコン)を用いて、断面の位置や向きの変更が容易にできる。断面力センサーでは任意断面にかかる力をベクトル表示できる。解析後も断面の追加・編集が可能で、かつ編集されたことによる再計算も必要ない。コネクターの結合力表示では、部品同士の力の伝わり方を確認できる。結合部については、単独あるいは複数で表示できる。
また弾性体データ(MNFファイル)の出力に対応。固有値解析の実行でMNFファイルを作成する。インタフェースポイントとしては、剛性(RBE2)や従属(RBE3)が選択可能だ。Apexには2018年以降、マルチボディダイナミクス(MBD)解析ソフト(動的解析)の「Adams」の機能を組み込むことを予定しており、その事前準備ともいえる機能のようだ。
さらに、線形座屈解析の機能も追加した。複数荷重の問題が扱え、安全率を考慮したテーブル表示ができる。モデル作成や解析においては、Apexの特色でもあるダイレクトモデリングやメッシュの自動更新、Apex独自の結合(接着とエッジタイ)などを利用可能だ。この機能では、適用荷重×安全率で導き出す、臨界座屈荷重をテーブル表示し、かつ赤と青で色分けする。臨界座屈荷重を超えてしまっていれば赤に、下回っていれば青になる。
2016年10月リリースの「MSC Apex Fossa」から追加した周波数応答解析の機能も拡張した。時刻歴の動的データを荷重として使用可能だ。断面力センサーとコネクター結合力表示を合わせて利用することで、荷重経路解析の結果表示もできる(関連記事:周波数応答解析を分かりやすくするCAE「MSC Apex Fossa」)。
造船関連など、大規模アセンブリーになる構造物の設計検討を効率化する機能も追加した。従来、1つ1つ手動で設定していたような機能をある程度まとめて自動的に処理したり、あちこちの機能に飛んで設定しなければならなかった機能を1カ所にまとめたりなどしている。解析準備の画面から直接、修正が必要な境界条件に関する機能を呼び出せるようになった。解析作業のマクロの記録・再生機能も備え、Pythonスクリプトが作成できる。モデリング機能としては、アセンブリーモデルのある部分全体を選んで、自動的にメッシュを合せる「タイ結合」や、「ユーザー定義フィーチャ削除」などを追加した。
【おまけ】次バージョンは猛禽類
これまで上位捕食者の動物名を付けてきたApexの次バージョンは「H」で「Harris Hawk」(モモアカノスリ)。モモアカノスリは南北アメリカ大陸に生息するタカ科の鳥で体長は50cm前後。小型の哺乳類や爬虫類を捕食する。国内では上野動物園でモモアカノスリが観察できる。
過去バージョンの製品名
- 「Arctic Wolf」(北極オオカミ)
- 「Black Marlin」(カジキ)
- 「Cheetah」(チーター)
- 「Diamond Python」(ニシキヘビの一種)
- 「Eagle」(ワシ)
- 「Fossa」(フォッサ:マダガスカル諸島最大の肉食動物となる猫科の動物)
Apexの起動時には現バージョンの動物のイラストが見られる。
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