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スズキのスペシャリティーカー「スイフト」は静岡の味!?乗って解説(3/4 ページ)

走りにこだわるコンパクトカーとしてクルマ好きから熱い支持を集めるスズキ「スイフト」。走りとデザインにこだわる現行モデルは、電動化や新技術といった“飛び道具”は控えめに、効率的な設計と軽量化というオーソドックスな手法で、真面目かつ爽やかな乗り味のクルマに仕上げた。グレード別に乗り比べ、スイフトの魅力について考えてみた。

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MHVとダウンサイジングターボを新設定

エンジンは3種類を用意。写真は排気量1.2lのエンジンをモーターアシストするマイルドハイブリッド
エンジンは3種類を用意。写真は排気量1.2lのエンジンをモーターアシストするマイルドハイブリッド(クリックして拡大)

 エンジンは4気筒排気量1.2lの自然吸気(NA)と、これをベースとしたマイルドハイブリッド(MHV)に加えて、バレーノにも搭載する3気筒の排気量1.0lターボを用意した。ハイオクガソリン指定のバレーノからレギュラー指定へ変更したため、若干出力はダウンした。レギュラー化はコンパクトカーとしては正しい判断だが、スイフトのキャラクターやトップモデルという位置付けを考えると、あえて高出力を狙うという手もあったのではないか。

 トランスミッションは、排気量1.2lのNAが先代同様にジヤトコ製の副変速機付きCVTと、新開発の5速MTを搭載。排気量1.0lターボにはアイシン・エィ・ダブリュ製の6速ATを組み合わせた。MHVはCVTのみの設定で、唯一アイドリングストップ機能を採用した。

 最初に乗った排気量1.0lターボ「RSt」は、かなり速いコンパクトカーといえる。3気筒ならではの低回転から十分なトルクを発生するため、どのようなシチュエーションでもグイグイ加速し、動力性能に不満はない。6速ATもトルコンATらしい滑らかかつ節度ある変速を行い、CVT全盛のコンパクトカーにおいてぜいたくな乗り味を実現している。一方で排気量1.0lターボはアイドリング時などにブルブルと伝わる振動が気になった。今後改良が進むことで解消されていくと期待する。

シンプルで見やすいスポーティーな2眼メーター。中央にディスプレイを配置し、燃費や出力、走行Gなどを表示できる
シンプルで見やすいスポーティーな2眼メーター。中央にディスプレイを配置し、燃費や出力、走行Gなどを表示できる(クリックして拡大)

 新型スイフトの本命と思われるMHVの「HYBRID RS」は、静かで快適なコンパクトカーだ。スイフトが採用したMHVは軽自動車でおなじみの「S-エネチャージ」の発展系で、モーター機能付き発電機「インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター」(ISG)と専用リチウムイオン電池を組み合わせている。減速時のエネルギー回生やエンジンの再始動を行う他、ベルト駆動によるモーターアシストも可能とした。

 モーターや電池は「ソリオ」のMHVと同様で、2.3kWのモーターと3Ahのリチウムイオン電池を採用した。新型「ワゴンR」では同じモーターに10Ahの電池を搭載しており、クリープ走行など一定の条件でEV走行(モーターのみでの走行)を可能としたが、スイフトではモーターはあくまでもアシストに徹している。

 MHVなしのNAと乗り比べると、発進時などに力強さを感じる。ただ、乗り比べないと分からないレベルともいえる。むしろ大幅な軽量化の効果により、NAでもコンパクトカーとしては十分な加速力を示すため、NAかMHVかは燃費や価格差で選ぶことになるだろう。ただ、NAにはアイドリングストップが装備されていない。今やアイドリングストップは軽自動車やコンパクトカーでも当たり前になりつつあるので、アイドリングの振動や騒音は古臭さも感じた。

フットワークは改善の余地あり

 国内向けスイフトの足回りは、「RS」と「標準」の2種類あり、エンジンの違いによる設定変更などは行っていない。先代モデルのRSは欧州仕様の足回りをそのまま流用したが、現行では欧州仕様をベースに国内向けにチューニングした。

クラスを超えた大径サイズのタイヤもスイフトの伝統。ベースグレード「XG」には15インチ、それ以外は16インチを装着する
クラスを超えた大径サイズのタイヤもスイフトの伝統。ベースグレード「XG」には15インチ、それ以外は16インチを装着する(クリックして拡大)

 タイヤはベースグレードの「XG」以外は「185/55R16」というスイフトの伝統にのっとり、ひと昔前のコンパクトカーでは考えられない大柄なサイズを採用した。銘柄はRS、標準ともにブリヂストン「エコピアEP150」を採用するものの、RSは専用チューニングを施した。

 市街地でのRSは、いかにもスポーツグレードというかなり締め上げたセッティング。フロア剛性を十分に確保しているので乗り心地が悪いという印象はないが、標準グレードでもスイフトらしい軽快さを実現しており、個人的には標準グレードのしなやかな乗り味に好印象を抱いた。さらにタイヤサイズを15インチに下げるか、サイドウォールの柔らかい欧州銘柄などに変更すれば、フランス車のようなしなやかな乗り味を実現できるのではないか。

 電動パワーステアリングの設定も、足回り同様にエンジン種類を問わずグレードごとに統一しているという。全般的に適度な重さを伴う素直な仕上がりだが、直進時は頑固にセンターを維持するような違和感を覚えた。開発者からは「軽量化の代償となりやすい直進安定性の向上を狙った」ものだという説明を受けたが、この辺りのフィーリングが良好だった先代に比べると熟成不足と言わざるを得ない。試乗車では特にターボモデルでこの傾向が強かったが、設定自体は同一であり「エンジン重量などが多少影響している」(開発者)ようだ。

 総じて現行スイフトは、かっちりとスポーティーな乗り味が特徴で、ベタな言い方だが歴代モデル同様、クルマ好きが支持する欧州テイストの強いコンパクトカーに仕上がっている。ただ、乗り味を実現するまでのアプローチはスズキならでは。得意とする軽量化技術と必要十分な剛性を確保し、なおかつ安価に実現している点が欧州車と異なる。

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