「NDロードスター」と「124スパイダー」から見えてきた、愛車になるための“余白”:クルマから見るデザインの真価(13)(4/6 ページ)
4代目となるマツダの「NDロードスター」。2012年発売の「CX-5」から展開されてきた新世代商品群の真打で、初代ロードスターのデビューから25年目での全面改良となった。兄弟車と比較することで、NDロードスターの個性と“余白”が見えてきた。
もう1つのロードスター、「RF」
最近ロードスターに追加されたのが、「ロードスター RF」だ。メルセデスベンツが「SLK」でメジャーにして以来、欧州自動車メーカーのモデルで多く見られる、屋根を閉じればクーペ、空ければオープンエアを楽しめる、一粒で二度おいしい系のモデルだ。先代のNCロードスターでは「リトラクタブルハードトップ(RHT)」という名称でラインアップされていた。NCのモデル末期では販売台数の半分をRHTが占めていたという。
NDロードスターでは名称がRHTからRFとなった。名前を変えたのは、ルーフの開き方がNCロードスターとは違うから。NCのRHTではオープンにすると、ハードトップ全体がボディーに格納され、幌のロードスターと同様のオープンスタイルとなった。それに対しロードスター RFでは、開くのはルーフトップとリアウィンドウのみだ。オープンというよりはタルガトップに近く、屋根を開けた時の開放感は幌のロードスターとはかなり異なる。
「RF」とはRetractable Fastbackの略だそうで、屋根を閉じた状態ではファストバッククーペのようなスタイルとなっている。全長が短い中で、なかなかにきれいなプロポーションを成立させている。ロードスターは、先代のRHTも含めオープンの状態が基本形なのに対し、ロードスターRFはルーフを閉じた状態が基本形の“屋根が開くクーペ”と解釈すると、これまで以上にキャラクターが異なる2つのスポーツカーができている。
運転してみた感じもロードスターとロードスター RFでは結構印象が異なる。まずは快適性の違い。幌のロードスターの場合、オープンで走ると速度が上がるほどに風の巻き込みが増え、幌を閉じていると風の巻き込みはないけれど、今度は風切り音が速度が上がるほどに耳についてきて、どちらを選ぶか二択となる。
まぁ、これはロードスターだからというわけではなく、幌を持つオープンカーでは「こんなもの」という認識であるけれど。個人的には、オープン状態の方が快適で、1泊2日での借用中、駐車するときを除けば、ほぼずっとオープンにして走っていた。そういえば、以前にBMWの「Z3」を持っていた時も似たような感じだったなぁ、と思いだした。
RFは日本人向き?
一方のRF、こちらは屋根を閉じているとほぼ乗用車みたいに車内は穏やかだ。オープン状態では身体の後ろの左右にピラーが残るので、ロードスターほど外から丸見えな感じはない。ネガティブに表現すると開放感が少ないともいえる。しかし、頭上のルーフパネルに加えリアウインドゥも格納されるので、適度に風がキャビンに回り込んでくる仕掛けを盛り込んである。
乗り始めた時には、オープンな感じがちょっと物足りないかなと感じたのも、開けてみたり閉めてみたりしながらしばらく走らせているうちに、これはこれでアリと思えてくるから面白い。ところがさらに走っていると、全体的にロードスターより1つ上の上質感を訴求してる感じと、手に入れるための価格を合わせて考え始めると、もう少し排気量の大きなエンジンで余力を感じさせるキャラクターの方が合っているかも……と、新たな疑問が出てくる。“一粒で二度おいしい”はなかなかに難しい。
魅力的ではあるけど、何となく立ち位置が難しいクルマにも思えたRFであるが、マツダの方に話を伺っていると「RFだとオープンにしても外からの丸見え具合が少ないのがいい」という理由の選択がある様で、日本人向きなのかもしれない。
広報車両を借りに来るメディアの人たちの中にも、オープン状態で送り出そうとすると「閉めていきます」という人が案外多いらしく、そういう人たちでもRFの場合は「これなら開けたままでいける」となりやすい傾向もある様だ。
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