「NDロードスター」と「124スパイダー」から見えてきた、愛車になるための“余白”:クルマから見るデザインの真価(13)(3/6 ページ)
4代目となるマツダの「NDロードスター」。2012年発売の「CX-5」から展開されてきた新世代商品群の真打で、初代ロードスターのデビューから25年目での全面改良となった。兄弟車と比較することで、NDロードスターの個性と“余白”が見えてきた。
ロードスターの骨格上にかつての124スパイダーを表現
従って、マツダがNDロードスターで歴代モデルの造形を踏まえつつ、将来への進化あるいは深化に挑戦する造形を求めたのに対し、フィアットとアバルトはかつての124スパイダーのイメージをロードスターの骨格上に再現することに心血を注いでいる。
そのため当然のことながら、ロードスターのように前後のオーバーハングを極限までコンパクトにして、物理的にも視覚的にも軽量化するような造形手法は選ばれていない。しっかりとしたサイズで、ヘッドライトからトランクまで前後に流れる造形を採用している。
ボディーサイドにあるプレスラインも、オリジナルの124スパイダーと同様に、リアフェンダー全体のボリュームを視覚的に強調している。タイヤの位置を強調するようにフェンダーのフレア部分を目立たせているロードスターとは対照的だ。
クルマの四隅のカドが取れたロードスターに対し、124スパイダーは前後のオーバーハングのボリュームも大きく、連動して全長も伸びている。
ロードスターと124スパイダーの2台を並べてみると、カタログの諸元表欄に書かれているボディー寸法の数値以上に、四隅にカドのある124スパイダーは大きく、立派に見える。ロードスターよりボリューム感があるボディーが鈍重に見えないよう、最初から17インチサイズのホイールを採用することで補っている。いわゆるインチアップの手法だ(ロードスターの標準仕様は16インチホイール)。
カタログではドリフトしながらコーナーを抜ける写真を大きく扱うなど、パワフルな走りをイメージさせている124スパイダーはターボエンジンを搭載し、カタログ上のパワーはロードスターより高出力ではある。しかし、実際に乗ってみるとロードスターに対して大きく差がある感じでもない。個人的にはボディーが小ぶりに感じるロードスターの方が軽快感もあり、小さなスポーツカーらしい印象だった。
FCAジャパンによると、124スパイダーのメインのユーザー層は40歳より上の男性で、AT車の販売比率が約7割とのこと。ロードスターの方は、最も販売比率の高いグレードの「S Special Package」で見ると、アバルトとは逆に74%がMT車である。ロードスターの方は走らせる楽しみの志向の人が多く、アバルトは雰囲気を楽しむ人が多く、案外競合関係ではないのかも? といった感じか。
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