「つながる産業」は進撃の合図か、経産省が考える日系製造業の現在地:製造業×IoT キーマンインタビュー(2/3 ページ)
第4次産業革命といわれるIoTなどを活用した産業変革が加速している。この新たな波を捉えるべく各国政府の取り組みが進む。日本でも2017年3月に「Connected Industries」を発表。さらにドイツとの間では「ハノーバー宣言」で連携強化を図る。これらの動きに関わってきた経済産業省 製造産業局局長の糟谷敏秀氏に日本の製造業の現在地を聞いた。
第4次産業革命における日本の旗「Connected Industries」
MONOist 経済産業省はここ数年、第4次産業革命への動きに対し、積極的な施策を打っていると見ています。そもそもどういうきっかけがあって、ここまで積極的な方向に動いてきたのでしょうか。
糟谷氏 世界中が動いている時に日本だけが遅れるわけにはいかないという危機感があった。動きが本格化したのは2015年前後からになる。いくつかの複合的な要因があった。1つはドイツがインダストリー4.0についての「実践戦略」を発表※)しいよいよさまざまな動きが具体化してきたという点がある。ちょうどそのタイミングで2015年3月にドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏が来日し、日独首脳会談が開催され、第4次産業革命における協力を進めていく流れが生まれた。
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また、政府が毎年作成し国会に報告している「ものづくり白書」の2015年版では、第4次産業革命に対する海外の状況を紹介し、警鐘を鳴らした。こうした中、2015年春以降、インダストリアルバリューチェーンイニシアチブ(IVI)が立ち上がり、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)が設立され、経産省も一気に施策を強化した。この2015年のメルケル氏の来日が2016年4月には次官級の6項目の連携へとつながり、さらに2017年3月のCeBITにおける「ハノーバー宣言」へとつながっていった※)。
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ドイツは「インダストリー4.0」のコンセプトを2011年に打ち出しており、日本の取り組みはそれに比べると大きく遅れている。そのため、まずは中身を充実させようと、取り組みを行ってきた。スマート工場の事例を作るための「スマート工場実証事業」補助金などを展開してきた他、中小企業のIoT活用を支援するために地域に支援拠点として「スマートものづくり応援隊」なども設立。また、中小企業が使いやすいIoTツールを公募する「スマートものづくり応援ツール」などの取り組みも行った。
IoT活用事例をマッピングした「オンラインユースケースマッピング」なども公開した他、標準化やセキュリティに向けた日独の専門家による意見交換なども実施。モノだけでなくサービス・ソリューションを提供する「ものづくり+(プラス)企業」になることなどもアピールし、さまざまな現実的な活動を進めてきた。
ただ、ドイツの「インダストリー4.0」だけでなく、フランスでの「Industrie du Futur(産業の未来)」、中国の「中国製造2025」など世界各国で、政府が中心となって1つの旗印を掲げて取り組みを進めている中、日本には何もなくて大丈夫なのかという点が議論となった。経済産業大臣の世耕弘成氏とも議論を重ね、2017年3月のCeBIT2017で日本の旗として「Connected Industries(つながる産業)」を発表した。
「Society 5.0」と「Connected Industries」
MONOist 日本には既に科学技術計画で示された「Society 5.0」というキャッチフレーズも持っています。「Society 5.0」と「Connected Industries」との関係性についてはどう考えていますか。
糟谷氏 Society 5.0は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く社会として超スマート社会の実現を訴えたコンセプトだ。ただ、これは社会全体の在り方を示したものでありConnected Industriesで示す産業はこの一部である。まず技術の変化が第4次産業革命を起こし、それを受けて産業がConnected Industriesと変化していき、こうした変化が最終的にSociety 5.0の描く世界を実現するという仕組みである。
日本は人口減少社会をアドバンテージとするべきだ。他国であれば失業問題などでロボットやAIなどによる自動化への抵抗感がある。しかし、日本は人手不足が顕著化し、その対策として進めていける環境にある。こうして考えるとロボットやAIなどの先進実践環境として、大きなアドバンテージがあるといえる。これらの環境を新たな強みとし、成功の形を作り出すことで、世界に対する競争力を新たに作ることができる。そういう発想の転換が必要だ。
また「Connected Industries」については、あらためて世界に価値を訴えていく。「Connected Industries」を旗頭に、世界に日本の価値を示す取り組みを進める。ただ、1カ国でできることは限られており、“ガラパゴス”にならないことが重要だ。そういう意味では一緒にできるパートナー国を増やしていくのは大事な活動だと考えている。
既にドイツやフランスとの連携は行っているが、欧州の幾つかの国などと連携について協議している。また、ASEANなどとの連携も模索していく。日本の製造業がASEAN地域には多く進出しており、日本のモノづくりの強みなども生かせる。日本企業の現地法人やサプライヤーなどとともに現地の企業などをつなげて新たな価値を作り出していくことなども考えたい。
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