古い設備でもリードタイム65%削減、GEヘルスケア日野工場がIoTで実現したこと:スマートファクトリー(2/2 ページ)
「スマートファクトリー Japan 2017」の講演にGEヘルスケア・ジャパン Brilliant Factoryプロジェクト長の田村咲耶氏が登壇。「GEヘルスケア日野工場における次世代工場の取り組み」をテーマに、同社工場のデジタル化への取り組みなどを紹介した。
450工場の中でのリーンショーケースの日野工場
ブリリアント・ファクトリーの定義は「Lean×Digital」。リーンマチュリティとデジタルマチュリティ2つの座標軸により5点満点で評価する。「リーン生産体系によるものづくりなどの基本ができており、改善化できる形になっているか。そのうえでデジタルの活用が条件となる」(田村氏)とし、GEでは4点×4点がブリリアント・ファクトリーの目安となる。
GEヘルスケア日野工場はCTガントリ(X線チューブや検出器などを含むドーナツ状の部位)、ディテクタ(CT内のX線を検出電気信号へ変換するユニット)、MRI(磁気共鳴断層撮影装置)、プローブ(超音波診断装置のセンター部分)などを生産している。
1982年の会社設立から、QCサークル、シックスシグマ、リーン生産方式を取り入れるなど、「KAIZEN」活動を積極的に進めてきた。その結果CTガントリの組み立てリードタイムは1982年当時5日だったものが、現在は4.2時間と95%削減するなどの実績も成果上がっている。こうした結果、GEの450工場の中でのリーンショーケースとして位置付けられ、また、ブリリアント・ファクトリーの最初の7つのショーケースにも選ばれた。
「この7つの工場のうち、日野工場以外の工場は3〜4年以内に設立されたかなり新しい工場で、最新の設備が導入されている。日野工場の設備は歴史も古く、かつ規模も小さい。その中で、IoTを使えば改善を加速することができることを証明していきたいと考え、取り組みを開始した」と田村氏は当時を振り返る。
「新しい設備を導入していくことではない」
田村氏はブリリアント・ファクトリーについて「最新の設備やロボットをどんどん導入していくことではない。今ある設備や資産を生かしながら、最適性と生産性向上を目指すことが重要だ」と述べた。現状の設備をネットワーク化することで、現場での、スピーディーな判断が可能となったことで、ある製品の製造リードタイムが1年で65%削減できた事例もあるという。
また、新設備の順次導入に伴い、レイアウト変更が2020年にかけて多数発生することが見込まれる中、モノや人の動きのムダ把握することができないという問題があった。それに対してビーコンシステムを活用し、従業員の動線を解析できるソフトなどを用いて、従業員の動きをチェック。ライン組み替え時の配置や倉庫での部品の収納位置の最適化を図る取り組みなども行っている。
今後の方向性としては「倍速のカイゼンスピードを目指す」として、デジタルとIT連携により、施設単位からエコシステム単位でさらなる効率化を図っていく。日野工場としてブリリアント・ファクトリー構想に沿って、他の施設・部門にも波及させるなどサプライチェーン全体を効率化・最適化に取り組む。さらに、ブリリアント・ホスピタル構想に基づき病院施設の効率化を図り、地域医療連携の効率化にもつなげていく方針だ。
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