ガンマ線を可視化する軽量の医療用コンプトンカメラを開発:医療機器ニュース
早稲田大学は、大阪大学や量子科学技術研究開発機構、浜松ホトニクスと共同で、ガンマ線を可視化する580gの小型カメラを開発した。このカメラを用いて、生体マウスの3D同時分子イメージングにも成功した。
早稲田大学は2017年5月18日、ガンマ線を可視化する軽量の小型カメラを開発したと発表した。このカメラを用いて、3種の異なる放射性薬剤を投与した生体マウスの3D同時分子イメージングにも成功した。早稲田大学 理工学術院 教授の片岡淳氏と、大阪大学や量子科学技術研究開発機構(QST)、浜松ホトニクスらの共同開発で、成果は同日付で、英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
開発チームは、環境計測用のコンプトンカメラを高精度化し、軽量で高解像度の医療用コンプトンカメラを開発。重量は580g、大きさは10cm弱で、半導体検出器を用いた従来装置の約10分の1となる。装置には浜松ホトニクスが開発した高性能光センサー「MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)」と、ガンマ線阻止能に優れたCe:GAGGシンチレータ(ガドリニウム アルミニウム ガリウム ガーネット)を採用。高密度かつセンサー部分を周辺機器と切り離すことで、小型・軽量化に成功した。
開発したカメラは、40mm先にある1MBqのガンマ線源(300〜2000keV)をほぼリアルタイムに可視化できる。解像度は陽電子断層撮影と同等の約3mmを達成。さらに、マルチアングル撮影ができ、均一で多色の3Dイメージングが可能となった。
動物実験では、生体マウス2匹に3種類の放射性薬剤、ヨウ素、ストロンチウム、亜鉛を投与してガンマ線で撮影したところ、2時間の測定で、ヨウ素(緑)は甲状腺に集積、ストロンチウム(青)は骨に、亜鉛(赤)は肝臓を中心に取り込まれている様子を確認。また、3次元的に12方向からのイメージを再構成し、多色かつ3次元でのガンマ線画像の取得に成功した。
得られた画像の正当性を評価するため、実験直後にマウスの臓器や骨を摘出し、集積した放射性核種の定量評価を行った。QSTでも校正線源を用いた詳細測定を実施し、画像の定量性を調べた。その結果、コンプトンカメラが20%の精度で放射線強度の情報を正しく3次元的に可視化できることが確認できた。
今後はより高度な動物実験や応用にむけ、画像の定量性を10%以下にまで改善し、より人間の目に近いガンマ線カメラの開発を目指す。
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