マシンビジョンシステムの種類とプラットフォーム:いまさら聞けないマシンビジョン入門(3)(2/2 ページ)
製造現場のプロセス自動化や品質向上に役立つマシンビジョンの基礎知識をお伝えする本連載。第3回はマシンビジョンシステムの種類やプラットフォームの違いについて紹介する。
3次元ビジョンシステムとは
3次元マシンビジョンシステムは、複数のカメラ、または1台以上のレーザー変位センサーで構成される。複数のカメラで構成された3次元ビジョンシステムは、パーツの位置情報をロボットに提供するロボットガイダンスアプリケーションなどで使用される。このようなシステムでは、複数のカメラをそれぞれ別の位置に取り付け、3次元空間の客観的な位置で「三角測量」を実行する必要がある(図5)。
一方で、3次元レーザー変位センサーアプリケーションを使った3次元マシンビジョンシステムは、1台のカメラで表面検査や体積計測を行い、3次元画像を生成することができる。高さマップは、対象物で反射したレーザの位置変位に基づいて生成する。キャリブレーション済みのオフセットレーザーを使って、表面の高さや平面性などのパラメータを測定する。ラインスキャンシステムと同じで製品全体をスキャンするには、対象物もしくはカメラの移動が必要となる(図6)。
マシンビジョンのプラットフォームとは何か
マシンビジョンシステムは、用途に応じて、さまざまな物理プラットフォームに実装して活用する。物理プラットフォームには、PCベースシステム、2次元アプリケーション用に設計されたビジョンコントローラー、スタンドアロンのビジョンシステム、簡便なビジョンセンサー、画像ベースのバーコードリーダーなどがその例である。適切なマシンビジョンプラットフォームは、通常、開発環境、能力、アーキテクチャ、コストなどのアプリケーションの要件を考慮した上で決まってくる。
PCベースのマシンビジョンシステム
PCベースシステムは、カメラや画像取り込みボードと簡単に連動させられる。豊富なマシンビジョンアプリケーションソフトウェアが利用でき、Visual C/C++、Visual Basic、Javaなど利用者の多いプログラミング言語の開発環境なども用意されている。ただ、開発は複雑で長期間に及ぶ傾向があるため、通常は大規模なシステムに限って行われ、対象も主にマシンビジョンの上級ユーザーやプログラマーに限定される。
ビジョンコントローラー
ビジョンコントローラーは、PCベースのシステムが持つパワーと柔軟性に加えて、過酷な工場環境の厳しさに耐えることができる耐久性を持つ点が特徴。3次元アプリケーションや複数台のカメラを使った2次元アプリケーションを簡単に構成でき、高度なアプリケーションをコスト効率が優れた方法で構成できる。
スタンドアロンのビジョンシステム
スタンドアロンのビジョンシステムは、コスト効率がよく、素早く簡単に構成できる点が利点だ。カメラセンサー、プロセッサ、通信機能を全てそろえ、照明やオートフォーカス光学機器を内蔵したものもある。さらに、コンパクトで工場全体に設置するには値段も手ごろである場合が多い。工程の重要なポイントで、スタンドアロンのビジョンシステムを使用することにより、生産工程の早い段階で欠陥を把握し、機器の問題を迅速に特定することができる。ほとんどのシステムに、Ethernet通信機能が組み込まれており、スケーラブルなビジョンエリアネットワークにリンクし、システム間でデータのやりとりを行い管理することも可能だ。
ビジョンシステムのネットワークを工場や企業のネットワークにアップリンクするのも簡単だ。工場内のTCP/IP機能を持つワークステーションで、ビジョンの結果や画像、統計データなどの情報をリモートで参照できるようになる。スタンドアロンのビジョンシステムの中には、追加機能により簡単なセットアップを実現する開発環境と、プログラムやスクリプトを記述してシステム構成やビジョンアプリケーションのデータ処理をより厳密に制御できる柔軟性の両方を兼ね備えたものもある。
ビジョンセンサーと画像ベースのバーコードリーダー
ビジョンセンサーと画像ベースのバーコードリーダには、通常プログラミングは必要なく、使いやすいインタフェースが用意されている。これらの大半はどのようなマシンにも簡単に統合できるため、専用の工程でシングルポイント検査を実行することが可能だ。組み込みの Ethernet通信機能を使って、工場全体にネットワーク接続を提供できる。
マシンビジョンを活用する意味
マシンビジョンは、工程または品質を管理するために、デジタル画像から情報を自動的に抽出することができる。多くのメーカーでは、既に人間の検査員ではなく、自動化されたマシンビジョンを使っている。これは、繰り返し行われる検査作業には機械の方が適しているからである。機械は高速で、仕事に感情を持ち込むことがなく、いつまでも作業を続けられる。また、1分間に数百、数千個のパーツを検査し、常に一定で、信頼できる検査結果を提供することも可能だ。製造現場で、マシンビジョンは主に計測、検査、位置決め、認識に使用されている。マシンビジョンを使用して欠陥を減らし、歩留まりを上げ、規制への準拠を推進し、パーツを追跡することで、メーカーは生産領域において、コストを削減することが可能となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- マシンビジョンとは何か?
製造現場のプロセス自動化や品質向上に役立つマシンビジョンの基礎知識をお伝えする本連載。第1回は、マシンビジョンとは何かを解説するとともに利点について紹介する。 - マシンビジョンのアプリとコンポーネント
製造現場のプロセス自動化や品質向上に役立つマシンビジョンの基礎知識をお伝えする本連載。第2回はマシンビジョンのアプリとコンポーネントについて紹介する。 - 産業用ロボット拡大の波に乗り“目”としての役割を広げるコグネックス
コグネックスは好調を続けるバーコードリーダ製品に加え、産業用ロボットの導入拡大に合わせマシンビジョンの成長に取り組む方針だ。画像処理技術の導入を加速させることでFA市場における自動化領域の拡大を促進する。 - 製造現場における画像処理【前編】
製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第5回のテーマは「製造現場における画像処理」についてです。具体的に画像処理が製造現場で効果的に利用されている実例を紹介します。 - ヤマハ発動機がマシンビジョンへ参入へ、自社以外のロボットにも対応
ヤマハ発動機は画像処理機能一体型の産業用カメラを発売する。従来ヤマハ発動機は自社のロボット用の画像処理製品を提供してきたが、新製品は自社製品以外にも対応し、カメラ単体でのビジネス拡大にも取り組む方針である。 - キヤノンが“ばら積みピッキング”の次に狙うのは“ロボットアームの目”
キヤノンは「Canon EXPO 2015 Tokyo」において、2014年に新規参入したマシンビジョンの新たな技術展示などを行った。