クラウドのソラコムとエッジのPFNがCeBITで共同デモ、「互いに良い補完関係」:CeBIT 2017
ソラコムは、ドイツ・ハノーバーで開催される国際情報通信技術見本市「CeBIT 2017」に出展し、ディープラーニング技術を開発するPreferred Networks(PFN)とともに共同デモを行う。
ソラコムは2017年3月15日、東京都内で会見を開き、国際情報通信技術見本市「CeBIT 2017」(3月20〜24日、ドイツ・ハノーバー)に出展し、ディープラーニング技術を開発するPreferred Networks(PFN)とともに共同デモを行うと発表した。
この共同デモは、PFNが提唱する「エッジヘビーコンピューティング」で得た情報を、ソラコムのIoT(モノのインターネット)通信プラットフォーム「SORACOM Air」でクラウドに送るという内容になっている。
具体的には、NVIDIAの組み込みAI(人工知能)ボード「Jetson TX1」とPFNのディープラーニングプラットフォーム「DIMo(Deep Intelligence in-Motion)」を使って、カメラの映像から人物を検知し、その年齢/性別を推定。検知/推定結果から年齢/性別ごとに人数だけを集計し、SORACOM Airでクラウドの「SORACOM Harvest」に送信する。つまり、カメラの画像データをクラウドに直接送ることなくディープラーニングによる計算結果を得られるわけだ。
このように、IoTの末端(エッジ)側で、ディープラーニングを基にした解析を行うことにより、センサーデータの全てをクラウドに送らずに通信ネットワークにかかるコストを抑えるとともに応答性を高め、プライバシー管理にも役立てようというのがエッジヘビーコンピューティングだ。
両社の社長が出会って意気投合、1カ月と少しで共同デモを完成
今回の共同デモの開発に当たっては、ソラコム社長の玉川憲氏とPFN社長の西川徹氏が出会って意気投合したという背景がある。「まずは両社の連携を強化するという観点から、今回の共同デモを開発した」(玉川氏)という。CeBITでの共同デモを経てから、ソラコムのパートナー企業にPFNが加わるなどして提携を模索していくことになりそうだ。
会見に出席したPFN 最高戦略責任者の丸山宏氏は「1月下旬から共同デモを作ることになったが、1カ月と少しで完成させられた。IoTネットワークを活用する上でプライバシー管理は大きな課題の1つだが、SIMカードの組み込みという形でその課題を解決できるソラコムの価値は高い。PFNのエッジヘビーコンピューティングのコンセプトとも合致している」と語る。
玉川氏は「クラウドの技術を中核とするソラコムと、エッジでのディープラーニングに強みがあるPFNは、互いに良い補完関係にある」と述べ、丸山氏も「エッジヘビーコンピューティングといえどもネットワークとの接続は極めて重要だ。そういう観点でソラコムとのパートナーシップはPFN始まって以来ベストのパートナーシップになる」と説明。両社の関係の良好さを強調し、CeBITの共同デモにとどまらない今後の取り組みにも期待を抱かせた。
なお、ソラコムのCeBIT 2017の出展は、欧州法人が展示を行う「ホール12」が中核となっており、PFNとの共同デモもホール12の展示ブースで披露される。加えて、日本がパートナー国となったことにより設置されるジャパンパビリオンにも出展しており、こちらはPALTEKなどと連携して開発した工場用IoTシステムを展示する。
関連記事
- ドイツの中心で「Society 5.0」を叫ぶ!? 「CeBIT 2017」に日本企業118社が出展
開催まで約1カ月に迫った世界最大級の国際情報通信技術見本市「CeBIT 2017」では、パートナー国である日本の118の企業/団体が「ジャパン・パビリオン」に出展。日本政府が掲げる科学技術計画のキャッチフレーズ「Society 5.0」の実現につながる、日本の技術や製品、サービス、最先端のソリューションを発信する。 - 世界を変える機械学習、1兆個のIoTデバイスを誰がプログラムするのか
MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum IoTがもたらす製造業の革新 〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜」を開催。同セミナーのレポートを前後編でお送りする。 - トヨタも注目、製造業とMVNOの深イイ関係
MVNO(仮想移動体通信事業者)は格安スマホ向けサービス。そんな認識は過去のものとなりつつある。客層分析や遠隔監視、施工支援などさまざまな用途に使われ始めており、トヨタもテレマティクス普及の切り札として検討中だ。 - ソラコムがグローバル対応SIMを米国で販売、データ蓄積サービスも追加
ソラコムはIoT通信プラットフォーム「SORACOM」に2つの新サービスを追加する。1つは、米国でのIoT向けMVNO回線サービス「SORACOM Air」の販売開始で、もう1つはSORACOM AirによるIoTデバイスの通信接続に加えて、クラウドへのデータの収集/蓄積も併せて行う「SORACOM Harvest」である。 - 製造業IoTに新たなデファクト誕生か、ファナックらが人工知能搭載の情報基盤開発へ
ファナックやシスコシステムズら4社は、製造現場向けのIoTプラットフォームとして「FIELD system」を開発し、2016年度中にリリースすることを発表した。競合メーカーの製品なども接続可能なオープンな基盤とする方針。製造業IoTでは各種団体が取り組むが、ファナックでは既に製造現場に350万台以上の機器を出荷している強みを生かし「現場発」の価値を訴求する。 - ドローンが機械学習で自律飛行、“らせん学習”で進化
Preferred Networksは「CEATEC JAPAN 2016」において、ドローンの自律飛行デモを公開した。同デモではドローンの自律飛行用プログラムだけでなく、シミュレーションプログラムも機械学習により進化させる「スパイラル学習法」を採用したことが特徴だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.