GLM設立秘話(前編):「和製テスラ」になれるか、京都発EVベンチャーの苦闘:モノづくり×ベンチャー インタビュー(3/3 ページ)
京都発の電気自動車(EV)ベンチャー・GLM。その創業から、EVスポーツカー「トミーカイラZZ」開発の苦闘、そして「パリモーターショー2016」でのスーパーカーコンセプト「GLM G4」の発表に至るまでの秘話を前後編でお送りする。
試作1号車は「商品性がない」
小間氏はなぜ絶望的な気持ちになったのか。
試作1号車は、走る、曲がる、止まるの面白さが全くないクルマで、「これでは、商品性がない」と判断せざるを得なかったからだ。
この時、ガソリン車とEVは全く違う乗り物であること、そして、それまで言われていたような「EVならPCのようにパーツを組み合わせれば完成する」という説が誤っていたことに小間氏は気づいたという。
その上、試作1号車は、安全性の基準が国土交通省から認められなかった。旧トミーカイラZZの車体は、10年以上前に設計されており、イギリスで生産し逆輸入して日本で販売されていた。現在の国内認証基準に適合していなかったのだ。
公開された試作1号機に対する業界評価は、大きく2つに分かれたそうだ。
大手自動車メーカーのエンジニアからは「モノができていない。あの会社はダメだ」という厳しい意見もあった。逆に「面白いチャレンジだ」と感じ、入社してきた者もいる。
現在、GLMで技術本部本部長を務める藤墳裕次氏もその1人だ。藤墳氏は、トヨタで高級車「レクサス」のアンダーボディー設計に従事していた。
エンジニアに藤墳氏を迎えたおかげで、2012年10月に試作機が国内認証を取得した。ベンチャー企業として、日本で初めてのEVスポーツカーでのナンバー取得だった。国内認証取得のノウハウを蓄積し、EVコンバージョンの試作機開発は終了。
EV版トミーカイラZZは、試作機と同時並行で2011年4月から開発をスタートしていた。コンセプトや車名、ロゴマークを継承し、モーターやバッテリーなど内部構造はもちろん、外観や車体、部品やパーツまで全てをゼロから開発。
2013年4月、EVスポーツカー「トミーカイラZZ」の新デザインを披露。限定99台の発売に対して、予約は即埋まった。800万円のスポーツカーに、実車を見ることなく購入予約が殺到したこともニュースで大きく取り上げられた。
当初は、発売から半年後に納車する予定だったトミーカイラZZ。しかし、実際にユーザーの元へ届けるまでに、それから1年半の月日を必要とした。
(後編に続く)
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