まだ“雲の上”感否めぬIoTと、SWオタクが腕を競うコンテスト:3D設計推進者の眼(18)(2/2 ページ)
機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は2017年2月5〜8日に米国で開催された「SOLIDWORKS World 2017」の内容の一部を紹介する。
Business Transformation through IoT(講演者:Mario Finocchiaro, VP, Business Development, Xively by LogMeIn)
IoTデバイス製品についての説明がありました。実際の設計における解説もあって、「このセッションが一番参考になったかな」と思っています。
内容的にはどうかというと、IoTのトレンドの話、デバイスデータなどを集約管理するための製品であるXivelyの紹介やその構築方法というものが主体でした。
そのセッションで、実際にSOLIDWORKSを使って開発された製品の紹介が1コマありました。「halo」という煙検知器の製品でした。モバイル端末への通信を行ったり、竜巻、洪水、ハリケーンなど、天候や災害の警告を配信したりすることも可能ということでした。haloの実物も会場に展示されていました。
ちなみに、HaloについてはSWW2016でも紹介がありました。
実物を見て、SOLIDWORKSを駆使した開発の説明を聞いて、IoTデバイスというものをより身近に感じました。IoTを日本語に訳すと「モノのインターネット」というモヤモヤしたものです。今後はHaloのようなIoTデバイスである製品が、もっと増えていくでしょうし、そのサービスを実際に利用する機会も出てくるでしょう。そうしていくうちに、IoTの理解が深まり、自社製品への具体的な展開というものも見えやすくなってくるのではないかと考えました。
IoTに関して言えば、製品の側面の話だけではなくて、工場における生産工程でのIoTの活用という側面もあると思います。製品設計は3D CADで行われ、CAMを用いた部品加工、組み立て工程の指示も3Dベース、その中での組み立てのデータや検査データがIoTを用いて管理されるようになるでしょう。ソリッドワークス CEOのジャン・パオロ・バッシ氏が話をしていた「スマート製造」が実現するのだろうと、今回のSWW2017で感じました。
日本ではやらないイベント「モデルマニア」
SWW2017でも例年通り、「モデルマニアコンテスト」(Model Mania Contest:以下、モデルマニア)が開催されました。日本では行われないイベントですが、米国では2000年から毎年開催しています。これまでのMONOistでも触れられたことのない話題ですので紹介しましょう。
モデルマニアでは「モデリングの速さ」を競っています。「SOLIDWORKS Tech Blog」では、過去にコンテストで競ったモデルの一部が紹介されていました。最新である2017年版のモデルは掲載されていないようです(記事公開時点)。
>>参考リンク:SOLIDWORKS World: Solution to Model Mania 2015
2017のお題は、シンプルな丸モノのモデリングでした。
モデルマニアのモデルは、3D CADのフィーチャーを学ぶ上では良い題材です。私はCSWP(ソリッドワークス認定試験)に向けた勉強会で、このデータを活用することがあります。
モデルマニアのお題は、設計の基本となる「Phese1」と、設計変更後の「Phese2」の2つがあります。まずPhese1の図面を見ながらモデリングを行います。それが完成したら、Phese2の図面を見ながら設計変更していきます。
それらのモデル精度とその作成時間を競いますので、Phese1のモデルをいかに早く正しくモデリングするかということも大事です。しかしPhese2へのモデリングへの展開を意識しないでモデリングをすると、Phese2で苦労することになります。
最終問題は、Phese2で完成したモデルを用いて、「SOLIDWORKS Simulation Xpress」により構造解析を行い、結果を求めます。解析者レベルではなくても、単一部品レベルで解析を行う拘束や荷重のかけ方、機械特性の設定レベルの知識は必要ですね。
モデルマニアでは、とにかくSOLIDWORKSのモデリングの幅広いフィーチャー機能を理解していることが勝てる秘訣のようです。効率の良いフィーチャー選択が時間短縮に効いてくるというわけです。「SOLIDWORKSオタク」……いえ、「SOLIDWORKSマニア」の皆さんの腕の見せ所でしょう。
このコンテストはゼネラルセッションなど開催するホールの奥にある個室の中で行われます。そしてカスタマー(顧客、ユーザー)と代理店の2部門で上位3人が表彰されます。SOLIDWORKS WORLDでゼネラルセッション壇上に上がれることは非常に名誉なことですが、これら表彰者はいつも最終日のゼネラルセッションの壇上で表彰されます。
今回のマニアな方々の中には、残念ながら日本人はいませんでした。読者の皆さんの中で「我こそ」と思う方がいらっしゃったら、ぜひ来年、チャレンジしてはいかがでしょうか?
私自身はモデリングのスピードには自信がありませんので、今回も挑戦していませんが、いつか挑戦してみたいと思っています。でも年齢を考慮したハンディキャップがあるといいのですが……。
さて、まだまだお話ししたいことがあるのですが、今回はここまでにします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- こうやればよかった! メカ設計者のためのPDM
多品種少量生産の産業機械業界のPLM事例は少ない。情報不足の中、諏訪の企業がPLMに果敢にチャレンジ。PLM立ち上げの肝は、PDMだった。メカ設計者視点にこだわったモノづくりIT立ち上げ奮闘記! - 設計者によるPDM導入と生産管理システムの再構築
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回はPDMと生産管理システムの関係やその問題について語る。 - PLM的な情報管理なんて実現しない?
製品ライフサイクル全体を管理するためにはPLMを基軸としたシステム作りが急務。PLM導入・改善プロジェクトを担当する際に事前に知っておくべき話題を、毎回さまざまな切り口から紹介していきます。