大型アップデートを果たした「Qt 5.8」、新機能は「8割の軽量化が可能」:組み込みソフトウェア インタビュー(2/2 ページ)
UI開発のフレームワーク「Qt(キュート)」の最新版「Qt 5.8」は、従来比で最大80%ものプログラムサイズ削減が可能になる新機能「Qt Lite」を搭載した。日本市場では、自動車、産業機器、IoTデバイスをターゲットに採用拡大を目指す。
Qt 5.8では、この他にもさまざまな新機能が加わった。まず、マルチスクリーンなどUIの複雑化に対応するため、Waylandによるウィンドウ管理を容易に扱える「Qt Wayland Compositor」を実装した。
「Qt Serial Bus」によって、車載システム向けのCANや、計装システム向けのModといったシリアルバスからの情報に直接アクセスできるようになった。IoTデバイスの開発を意識して、また「Qt Quick Software」のバージョンアップにより、OpenGLだけでなく、「Direct 3D 12」や「Vulkan」などの3DグラフィックスAPIを扱える。そして「Qt SCXML」によって、XMLベースのステートチャートで複雑なUI開発のワークフローを確認しやすくなった。
「Qt」が車載情報機器のUI開発で期待される理由
ニエミ氏は日本市場でQtの成長を期待する分野として「1番目が自動車、2番目が産業機器、3番目がIoTデバイス」と述べる。
実際に、機能進化が著しい車載情報機器のUI開発では、Qtに対する期待の声は大きい。その理由についてノール氏は「複雑化するUIを開発する上で、HTML5が候補に挙がったが性能を出しにくいという課題があった。これに対して、ノキアがタッチ操作に基づくユーザー体験の向上に注力して開発が進められたQtは、動作の早いUIを簡単に作れる上に、アニメーションや、3DのためのOpenGLも使えた。だから選ばれたのではないか」と述べる。
また、HTML5で構築したUIには、ネイティブアプリケーションを追加しづらいという課題もあった。Qtはネイティブアプリケーションを開発するためのフレームワークなのでそういった問題はない。現在のQtは、HTML5対応の「Chromium」エンジンを搭載しているので、ネイティブアプリケーションにHTML5を組み合わせられるようになっている。
Qt 5.8におけるQt Liteの搭載理由になっているIoTデバイスについては「IoTによって、ファクトリーオートメーションとホームオートメーションの市場が拡大するだろう。Qtがまず対象とするのは、ディスプレイベースのUIを持つIoTデバイス、いわゆるラージIoTだ。ただし、ディスプレイベースのUIを持たないIoTデバイスも、通信連携するタブレット端末の画面をUIに使うことが想定される。2017年6月ごろに発表する『Qt 5.9』以降では、こういったん分野への対応も進めたい」(ノール氏)としている。
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