“シンの”トヨタ生産方式とは? 実践事例から学ぶ経営改善の決め手:鈴村道場(5)(3/3 ページ)
「トヨタ生産方式」は、生産という言葉が使われていることもあって「生産業務の現場改善のための手法」と誤解されていることが多い。しかし実際には、事業活動全般に適用できることから企業の経営改善に役立っている。トヨタ生産方式の達人・鈴村尚久氏が、実践事例を基に、“シンの”トヨタ生産方式について解説する。
4.改善の心得
そして、改善活動を継続して行い続けるための訓練を実施します。
<着眼点1>単なる「生産改善」として捉えない
- 土台である「モノづくり」が変われば全社を変えるきっかけになる
- 単なる改善……部門単位orそれ以下で遂行
- 変革……全社の各部門が有機的なつながりで実行
<着眼点2>今の評価基準が本当に正しいのか?
- 間違った在庫削減、原価低減の視点をしていないか?
<着眼点3>改善を進める上での判断基準
- 利益を生む人は誰か?⇒自社は製造会社なので、作って売ってナンボである事を忘れずに!
- 顧客にメリットを生まない改善は単なる自己満足⇒最終的な判断基準は「お客さまにメリットがあるか?」が重要
<着眼点4>改善は「守・破・離(しゅはり)」
- 守・破・離
- まずやって見る
<着眼点5>真の改善とは
- 問題発見能力の向上、原因解析能力の向上⇒改善能力を持った人材の育成
5.まとめ
最後に要点をまとめます。
(1)現状調査がポイント
⇒『自社の本当の問題点、課題は何か』に気付く。
(2)生産管理の常識は正しくない
- 過大な在庫を持って需要変動に対応×
- 在庫を持たないのがトヨタ生産方式××
- →少量の在庫でもレスポンスを素早くすることで対応○
- まとめて作る、まとめて運ぶ×
- →小まめに、定量ずつ、作る、運ぶ○
⇒まず、意識改革が必要。当たる生産計画を立てようとするのでなく、短工期で必要なモノを生産できる工程づくりが大事。生産管理部門の主要な悩みが解決する。ただし、季節変動に対応するやり方もその中にはある(大きく需要が変動する場合の考え方)。
(3)「改善=企業の正常化」の際に考えるべきは順番
- 質⇒量⇒タイミング⇒コストの順番
- 質の向上
- 量の確保
- 要るもののみタイムリーに作る
⇒コストはほどほどに納まる。それからさらなるコストダウンを行う。
(4)改善手法の習得と実践だけでは不十分
マラソンに例えるとユニホームや靴を用意して準備運動をした程度。繰り返し練習を重ね、走り込みを行い、タイムをあげて行く事が重要
⇒さらに問題を追及してゆく事が本当の改善活動。改善能力を持った人材育成(経営者レベルの目線に立った考え方の考慮)
このような形で経営改善を行うことにより、利益や売上が向上するだけでなく、社会貢献できる企業と認められ企業価値向上につながり、社員満足度にも寄与します。
ぜひ皆さまもこの手法を実践して頂きたいと切に願います。
セミナー『成功事例から学ぶ!「シンのトヨタ生産方式」』開催のお知らせ
連載「鈴村道場」筆者の鈴村尚久氏が直々に「シンのトヨタ生産方式」を解説するセミナーを2017年3月17日(金)、東京都内で開催します。
これまでの連載でも説明した通り、本来のトヨタ生産方式は、製造業の生産改善だけでなく、小売業やサービス業の業務改善にも適用可能であり、企業経営や事業運営の効率向上にも役立てられます。単なる生産コスト削減にとどまらない、もうけを生み出す考え方なのです。本セミナーでは、トヨタ生産方式の達人である鈴村尚久氏による「シンのトヨタ生産方式」の解説と併せて、鈴村氏の指導を受けた企業の成功事例を多数紹介します。自身の所属する企業や事業部でどのように活用すれば良いかを、鈴村氏に直接聞けるように、質疑応答の時間も長めに設定しました。
筆者紹介
エフ・ピー・エム研究所 所長 鈴村尚久(すずむら なおひさ)
e-mail:nao@fpmri.com(メールの際は「@」は半角文字で)
1976年3月京都大学法学部卒業。1976年4月トヨタ自動車入社。退社後1999年8月にエフ・ピー・エム研究所を設立。トヨタ生産方式のコンサルタントとして、はくばく、ピップフジモト、パナソニック、マルヨシセンターなど多くの企業の生産改善を手掛ける。著書に『トヨタ生産方式の逆襲』(文春新書)。父・鈴村喜久男氏(故人)は「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一氏の側近として知られる
筆者紹介
株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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