“シンの”トヨタ生産方式とは? 実践事例から学ぶ経営改善の決め手:鈴村道場(5)(2/3 ページ)
「トヨタ生産方式」は、生産という言葉が使われていることもあって「生産業務の現場改善のための手法」と誤解されていることが多い。しかし実際には、事業活動全般に適用できることから企業の経営改善に役立っている。トヨタ生産方式の達人・鈴村尚久氏が、実践事例を基に、“シンの”トヨタ生産方式について解説する。
2.まず、パラダイムシフト
私は必ず指導の最初に「パラダイムシフト」を行います。パラダイムシフトとは、一般的にその時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいいます。
世の中の常識は何と間違っていることが多いのでしょうか。一番の常識になっている「在庫を山程持ってから売る」といった商法は、私に言わせると致命的な経営手法だと確信しています。
なぜ常識になっているかというと、営業部門と生産部門(売る人と作る人)が違う組織におり、連携が悪いから緩衝材としての在庫ができるのです。
売上至上主義の会社が何と多いことか。その上、1カ月分以上の売るものがなくては売れないとの考え方が前提となり、営業部門が水増しした販売計画を立て、生産部門に在庫の山を築かせ、営業マンが精神論で販売活動をするスタイルが今も深く根ざしている会社がたくさんあります。
こんなスタイルが常識では当然、売れないものが出て当り前です。このようなことをやっている限り救いようが無いと指導先の経営者に気付かせることを行います。
次の手順は過去に指導した企業の事例となります。
<手順1>生産管理業務の課題の自覚
- お客さまからは短納期での製品要求⇒タイムリーに応えられない……短工期での生産の必要性
- 販売部門のフォーキャストがあたらない⇒欠品・在庫の増加……予想に頼らない生産、在庫管理
- 棚卸資産の増加⇒必要な時に買った、作ったはずなのになぜ……需要予測と実績のズレの認識
- 急激な需要増減に四苦八苦⇒本当に欲しい物は何?……本当の需要がタイムリーに見えていないことが問題。予想は外れる
<手順2>自責で考える
- 他責にしてしまうと、「相手がこちらの望む姿に変化してくれることを祈る」しかなくなる。物事を前進させるには自分の行動を変えることで、前提条件を変化させていくようにする
<手順3>パラダイムシフト
- 今まで「良かれ」と思ってやってきた事が本当に正しかったか? 自分達の常識は、お客さまや市場から見たら非常識なんて事は無いか? 一度、全否定で考えてみる
<手順4>目指すべきところ
- まずは、お客さまが必要なモノを必要な時に必要なだけ提供する。そのタイミングに製品を提供できる実力が無ければ、ある程度の在庫を持ってでも対応する
- 持たなければならない在庫の削減と、変動に容易に耐えうるように、工期は限りなく短くしてゆく
3.お客さまの「欲しい」時とは
次にお客さまが自社に何を求めているのか明確にしていきます。本当に顧客から求められるものをタイムリーに供給することが大事だからです。
<Point1>お客さまの「要求納期」は何処で決まる?
<Point2>自社の業界ってどんな業界?
<Point3>モノを買うときに求める事:性能やスペックor価格が安いorデリバリー(短納期)
⇒自社は何に重きをおいてゆくのか? 経営理念、行動指針、○○年度ビジョン
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