IoTでつながるクルマの未来――コネクテッドカーに向け電機業界がなすべきこと:IHS Industrial IoT Insight(2)(2/3 ページ)
今後の製造業の発展に向けて必要不可欠とみられているIoT(モノのインターネット)。本連載では、IoTの現在地を確認するとともに、産業別のIoT活用の方向性を提示していく。第2回は、つながるクルマ=コネクテッドカーとしてIoT端末の1つになる自動車を取り上げる。
自動車向けにサービスやコンテンツを提供する「TSP」
ここで、TSPの現状について整理しておきたい。日本ではまだなじみのない単語かもしれないが、経路検索サービスの「NAVITIME」を展開するナビタイムジャパンや、地図データ大手のゼンリンのような企業がこれに該当する。
これらの企業が提供する情報サービスが広く使われるようになると、レストランや宿泊施設、レジャー施設情報との連携、広告宣伝などが活性化し、ユーザーに提供される情報量が急速に増加するだろう。最近では自動車保険業界がこのサービスを活用することで、ユーザーの運転状況に見合った保険プログラムを提案するなど、さまざまな業種との関わり合いが増える傾向にある。
クルマのメンテナンスに必要な情報を随時発信することで、ガソリンスタンドやサービスステーションに立ち寄ることを指示するなど、事故を未然に防ぐことを目的としたサービスもある。スマホのアプリケーションの1つとして利用できるサービスから、M2Mモジュールを搭載したクルマのあらゆる情報を対象にしたサービスまで、われわれがクルマで利用できるサービスが一気に立ち上がろうとしているのだ。
図2のグラフでは、IoTにおける自動車用データ通信量の比率を示した。2020年まではIoT全体の通信量の2%を下回っており、まだメジャーな市場とは言い難い。しかし既に述べたように、eCallのようなシステムの搭載が欧州で義務化されること、車載M2Mモジュールの出荷が2019年には新車生産台数の50%になること、そしてこの環境を活用した車載IoTサービスが一気に増えようとしていることなどを考えると、自動車用の占める比率は徐々に増加するはずだ。IHSでは、2025年時点で全体の10%程度を占めるようになると予測している。
クルマのIoT化は、ADAS(先進運転支援システム)の進化とともに、自動運転の普及に向けて成長が続くだろう。ドライバー不在のクルマに関する整備情報、位置情報、提供できるサービス内容など、極めて膨大なデータをユーザーにリアルタイムで提供するインフラも不可欠となる。
通信プロトコルは、現行の4Gから5Gへ移行する必要があるだろう。データ通信量が爆発的に増え、クルマ専用のサーバやデータセンターが必要になるかもしれない。
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