網膜色素変性症治療のための埋め込み型薬剤徐放デバイス:医療技術ニュース
東北大学は、薬剤徐放デバイスを作成し、その網膜保護効果を示したと発表した。難治性でこれまで治療法がなかった網膜色素変性症の効果的な治療法開発につながることが期待される。
東北大学は2016年12月13日、薬剤徐放デバイスを作成し、網膜色素変性症モデルのウサギを用いて同デバイスの網膜保護効果を示したと発表した。同大学大学院医学系研究科の阿部俊明教授らの研究グループによるもので、成果は同月1日に「Investigative Ophthalmology&Visual Science」誌の電子版に掲載された。
網膜色素変性症は難治性の病気だが、最近の報告で、緑内障の治療薬であるウノプロストンが視細胞を保護し、網膜の錐体細胞の変性を抑制する可能性が示唆された。しかし、点眼による治療は、有効な濃度の薬剤がどのくらい網膜へ到達するのかについて課題があった。
同研究グループは、ウノプロストンを徐々に放出する装置「徐放デバイス」を作成した。同デバイスは、3Dプリンタで光硬化性樹脂を3次元成型したもので、リザーバー、薬物、徐放膜から構成されている。徐放膜には分子量の異なる2種類の光硬化性樹脂を混合し、ウノプロストンが徐々に放出されるようになっている。同デバイスを後眼部の強膜(白目部分)に留置することで、錐体細胞が集まる網膜の中心部(黄斑部局所)に薬物を送る。
網膜色素変性症のウサギで検証したところ、強膜上にウノプロストン徐放デバイスを留置し、網膜電図、光干渉断層計を4週間おきに40週間評価した。その結果、プラセボ(偽薬)デバイスおよび未処置群と比較して、埋植後32週間まで視細胞の変性が有意に抑制されていた。また、眼内のウノプロストン量を測定装置で定量した結果、ウノプロストンが持続的に検出された。この結果から、同デバイスが32週間の長期にわたって網膜変性から視細胞を保護することが示された。
作成したデバイスは、2017年度から治験を始める予定。今回の研究成果が、網膜色素変性症の効果的な治療法開発につながることが期待される。
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