「Society5.0」時代に求められるサイバーセキュリティ9つのポイント:ET2016会場レポート(2/2 ページ)
「Embedded Technology 2016」「IoT Technology 2016」(2016年11月16〜18日/パシフィコ横浜)の特別講演として東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授の江崎浩氏が登壇。「IoT・ビッグデータ時代に向けたSociety5.0インフラストラクチャの設計」をテーマに、「Society5.0」時代に組み込みシステムに求められることを提言した。
システムは「PUSH型」から「PULL型」へ
インターネットにおいてIoTは第一の波のWeb、第2の波の検索に続いて、第3の波といわれている。この時代になって最先端最先端のシステム設計はサイバーファーストとなり、それに従うようにフィジカル空間へと展開する形となっている。
これらを背景に、システムは「PUSH型」から「PULL型」へと変化し、現在のベンダーやプロバイダー主導型のシステムは、ユーザー主導型へと移ろうとしている。インダストリー4.0においても方向性はサプライチェーンではなく、デマンドチェーンを目指している。IoTデバイスはデータPUSHからデータPULLで、自分で大量のデータ処理を行う。目的のIoTからデータをPULLして、目標のIoTデバイスにPUSHするという形である。
江崎氏は「多くの場合インダストリー4.0はセンサーを使って効率を上げるとしているが、そのファンクションはそのチェーンの中の効率化だ。それとともにチェーンをどういうふうに最適化するかを考えた場合、デマンド型に変える必要がある。つまり、PULL型にユーザーサイドを引き込む形にもっていかなければならない」と述べる。
また、話題の人工知能については2つの種類があり「今、はやっているのは子どもの人工知能だ」という。「子どもの人工知能」とは認識や運動、言語の意味理解など、千差万別の自然現象に適応するような「人間の子どもが当たり前にやっているような事象」をこなす能力である。実際には、これらの認識や運動などにはコンピュータで演算しようとすると膨大な計算量が必要となり、難しかった。一方で「大人の人工知能」は、推論などをベースに高度な論理によるデータ分析などを行うようなものである。
子供の人工知能にはアルゴリズムがないが、高い計算能力によってパラダイムを変えつつある。ただ、子供の人工知能にはアルゴリズムがないので、どう動くが予想がつかなく、そのためセキュリティが重要になる。「子どもの人工知能と大人の人工知能の2つを区別して活用していくことが必要である」と江崎氏は強調している。
IoTやビッグデータに関連した話題の中で、大きな変化の1つが車の使い方だ。電気自動車の登場で、排気ガスがなくなるため、駐車場がいらなくなり、リビングルームに入れることができるようになった。部屋に入れてカーオーディオで音楽を楽しむことも実現できる。また、車輪で移動しなくてもよく、さらに、余った電気をエネルギー供給源としても使えることなども予測された。さらに自動車革命は家の革命でもあり、不動産を動産に変え、移動する家というものの含めた社会設計を考えられる。これは、「国土交通省の国土のグランドデザイン2050の基本的考え方の一つであるコンパクト&ネットワークというものにつながっていく」(江崎氏)とした。
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