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「ナイトライダー」が現実に、音声アシスタントの進化が止まらないIoTと製造業の深イイ関係(3)(3/3 ページ)

脚光を浴びるIoT(モノのインターネット)だが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第3回は、IoTと人工知能(AI)との連携によって進化が加速している音声アシスタント機能の動向に迫る。

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ドローンにも搭載、声紋による個人認証が可能に

 音声アシスタント機能は、スピーカーやクルマにとどまらず、さまざまなデバイスへの搭載に向けた動きが見え始めている。2016年10月18日、アマゾンはドローンに音声アシスタント技術を搭載する特許登録を行っている。これは、音声による指示を受けるとその意味を解析してタスクを行い、完了後に報告するというものだ。

 アマゾンは、不明者の発見や不測の事態への対応といった警察向けの利用や、行列の長さ測定などへの利用を検討している模様だ。現時点ではAlexaの利用は明記されていないが、恐らく搭載されるものとみられている。

 中国の検索エンジン大手Baidu(百度)も音声アシスタントに力を入れている。現在はスマートフォンユーザー向けを想定しているが、今後これらの技術はロボットや家庭用製品など、あらゆるデバイスに搭載するとみられている。機器ごとに異なる操作方法をユーザー側で吸収するのではなく、デバイス側で吸収する動きといえよう。

 ただし懸念点もある。Amazon Echoを例にとってみると、スピーカーを用いてショッピングを行う際に、持ち主のAmazonアカウントがデバイスにひも付いているため、「Alexa」(デバイスを起動させるためのウェークアップワード)と呼びかけさえすれば、誰もが持ち主が登録したアカウントで商品を注文することができしまう。既にこのような被害も報告されているようだ。

 そのため、今後は声紋認証などにより、個人の特定ができるような技術との組み合わせが必要となってくる。実は、そういった技術は既に一部サービスで導入されている。例えば、パナソニックが提供するスマートテレビ「Smart Viera」にはNuance Communications(ニュアンス)の声紋認証技術が利用されている。テレビに話しかけるだけで、家族1人1人の声を識別し、個人の好みに合った画面を表示させることができるのだ。

 また、オランダの金融機関であるINGは、ニュアンスの音声認証モバイル決済サービスを利用している。「My voice is my password」とスマートフォンからシステムに話しかけることで個人を認証し、残高照会などができる仕組みとなっている。仮に他人にスマートフォンを使われたとしても、本人の声がパスワードになっているので口座情報にアクセスできないのだ。

 日本国内でも、大日本印刷がニュアンスと提携し、スマートフォンからの音声入力に対して声紋認証が行えるサービスの提供を2016年12月に開始する。当面はスマートフォンがモノの「入り口」であることから、スマートフォン向けに展開されているが、今後はさまざまなデバイスに搭載される可能性もある。

 一方で、公共の場など周囲に人が多くいる場所や騒音が激しいところで、1人でデバイスなどに話しかけることに対する抵抗があるのも事実だ。そこで最近注目されているのが「チャットボット」である。これは、「LINE」や「Facebook Messenger」などのチャットアプリを使ってさまざまなサービスを実行しようとするものだが、その中には家電などをコントロールするものも含まれている。つまり、音声ではなくテキストで家電の操作を行うのだ。

 2016年に入って、急激にチャットボットが注目を集めており、大手IT企業各社が同市場への参入を試みている。しかし、実は2014年に韓国のLG Electronics(LG電子)が、スマート家電の取り組みの一環として、LINEを用いた会話インタフェースを実現している。

 「LG HomeChat」と呼ばれるこのサービスは、LINEからテキストでメッセージを家電に送ることで、例えば冷蔵庫に何が残っているか、食洗機がいつ終わるかを問い合わせると、各家電がその問い合わせに対する回答を返してくれるのだ。

 シャープも家電に対話機能を付ける「ココロプロジェクト」を開発中であり、サムスンはAlexaやCortanaに対応させることで家電との「会話」を実現している。デバイスや家電ごとに莫大な数のアプリをインストールするのではなく、LINEなどチャットアプリであらゆる家電と会話できれば、例えば帰宅途中の電車から暖房のスイッチを入れるなどしておき、帰宅時には会的に暖まった部屋に入れるということも可能となる。さらに、スマートフォンを介して、他のアプリやサービスとの連携も図れるようになることから、そもそもチャット入力しなくてもスケジュールや現在地などから総合的に判断して、おおよその帰宅時間を予測した上で、逆算して部屋を暖めておくことも可能になるかもしれない。

 音声アシスタント自体は以前から存在する技術だ。しかし、人工知能との組み合わせにより、単に「デバイスによって操作方法が変わらない」だけでなく、デバイスそのものを意識しない、ユニバーサルデザインとなり得るだろう。

筆者プロフィール

吉岡 佐和子(よしおか さわこ)

日本電信電話株式会社に入社。法人向け営業に携わった後、米国やイスラエルを中心とした海外の最先端技術/サービスをローカライズして日本で販売展開する業務に従事。2008年の洞爺湖サミットでは大使館担当として参加各国の通信環境構築に携わり、2009年より株式会社情報通信総合研究所に勤務。海外の最新サービスの動向を中心とした調査研究に携わる。海外企業へのヒアリング調査経験多数。



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