“アメーバ”みたいな人工知能が人員配置やエネルギー管理を最適化:人工知能ニュース
NECは、ユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」において、人工知能(AI)技術「自律適応制御」を紹介。変化する状況に合わせて、多数の人やモノの動きを自動制御し、全体最適に導く“アメーバ”のようなAI技術だ。
NECは、ユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」(2016年11月1〜2日、東京国際フォーラム)において、人工知能(AI)技術「自律適応制御」を紹介した。既に物流センターの人員配置や、ビル空調のエネルギー管理、タクシーの配車などでの実証実験が進められている。
自律適応制御は、変化する状況に合わせて、多数の人やモノの動きを自動制御し、全体最適に導くAI技術である。アメーバが、脳が存在しないにもかかわらず、核同士が互いに影響し合い、食物の分布の変化に合わせて全体形状を常に最適化することに着想を得て開発された。個々のシステムが協調して自律的に全体を最適化するAIであり、過去データの蓄積やルールの事前作成がなくても、リアルタイムデータを基に全体最適に向けた的確な制御や次に取るべきアクションを提示してくれる。
展示で紹介した事例は2つある。1つは、物流センター内での人員配置の最適化である。従来は、刻々と変化する状況と人員配置がミスマッチを起こし、作業が滞留するなどの問題があった。このような状況で、目標を「生産性」、制御対象を「エリア」と「人員」にして、自律適応制御を導入した。その結果、現場の負荷状況に基づいて最適な人員配置をレコメンドすることにより、待ち状態や滞留を抑制し、余剰コストを削減できるようになったという。シミュレーションベースではあるものの、7%の生産性向上効果が得られた。
もう1つの事例は空調などビル設備のエネルギー管理だ。ビル空調において、節電と快適性の両立を実現するには、数年分の過去データに基づく専門家による制御計画や、不足データを取得するためのセンサーの追加が必要になる。現在進行形のデータに合わせて、制御計画も更新しなければならない。そこで、1次目標を「快適性」、2次目標を「節電」とし、制御対象を「電気機器」にして自律適応制御を導入した。その結果、快適性を維持しながら、10〜20%の節電を実現できた。
「過去データが不要で複雑な制御ルール作りもいらない。目標と制御対象を決めれば、全体最適に導いてくれるので、有用なAI技術になるだろう」(同社の説明員)という。
関連記事
- なぜNECは「製造業×IoT」に全力を振り切れたのか
IoTがもたらす革新は、製造業にどういう影響をもたらすのだろうか。ITベンダーでありながら製造業としての立場を持つNECはその強みを生かして早くから製造業のIoT活用を支援する「NEC Industrial IoT」を推進してきた。同活動を推進するNEC 執行役員 松下裕氏に話を聞いた。 - 脳を模倣したAIチップをNECと東大が実用化、総合的提携の一環で
NECと東京大学が基礎研究から人材育成、社会実装まで及ぶ総合的な産学連携に合意した。第1弾として脳の構造を模したAIである「ブレインモルフィックAI」の実用化と社会実装を進める。 - NECの人工知能は5つの質問だけで「うまい棒」の好みを当てる
NECは、ユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」において、「AI活用味覚予測サービス」のデモンストレーションを披露した。人工知能(AI)が出題する5つの質問項目に対する参加者の回答を基に、15種類の「うまい棒」からその参加者の好みの味を予測する。 - NECがAI事業強化「思考の拡大」目指す、「脳型コンピュータ」開発も
NECが人工知能関連事業を強化、人員を現在の倍にあたる1000人に拡大する。増員によってAI事業の適用範囲拡大を図り売り上げ2500億円を目指す。AI活用基盤として、脳型コンピュータの開発も進める。 - 富士通が量子コンピュータ超える新AI技術、グラフ構造データへの深層学習適用も
富士通研究所が人工知能(AI)技術の最新成果を発表。「量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャを開発」と「人やモノのつながりを表すグラフデータから新たな知見を導く新技術『Deep Tensor』を開発」の2件である。 - 日立の人工知能技術「H」が“汎用AI”だからできること
日立製作所は、ユーザーイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO」において、同社の人工知能(AI)技術「Hitachi AI Technology/H(以下、H)」を紹介するデモ展示を行った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.