富士通が量子コンピュータ超える新AI技術、グラフ構造データへの深層学習適用も:人工知能ニュース(1/4 ページ)
富士通研究所が人工知能(AI)技術の最新成果を発表。「量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャを開発」と「人やモノのつながりを表すグラフデータから新たな知見を導く新技術『Deep Tensor』を開発」の2件である。
富士通研究所は2016年10月20日、本社(川崎市中原区)内で研究開発戦略説明会を開催。同社が開発した人工知能(AI)技術について最新の成果を2件発表した。
現在、AI技術については、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングに注目が集まっている。ただし、人間の脳のような知能を持ったAIを創り出すには、その他のさまざまなAI技術も必要になってくる。富士通研究所は現在、扱う問題ドメインに特化した性能を提供する「ドメイン志向コンピューティング」の開発に注力している。さまざまなドメイン志向コンピューティングの開発を経て、最終的に将来的な脳型コンピューティングの実現が可能になるという考え方だ。
同社社長の佐々木繁氏は「AI技術の進化に向けてニューラルネットワークを用いたディープラーニングは極めて有用だが、それだけでは人間の脳のような知能を持ったAIを創り出せない。AIが賢くなる仕組みとして、当社が1998年に発表した『Semantic Web』の研究開始から約20年にわたって蓄積してきた、既存知を構造化するグラフ構造データを用いたAI技術は不可欠だ。グラフ構造で表現される知識から、いかにして新たな知を創出するかが、今後のAI技術開発で重要になってくる」と語る。
量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャ
今回発表したAI技術の1つ目は、トロント大学との共同研究による「量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャを開発」だ。ドメイン志向コンピューティングのうち「判断・意思決定」のドメインと関わる「組み合わせ最適化問題」の処理を大幅に高速化するものとなる。
さまざまな社会問題は、どのような順番で対処していけば最も効率的に解決が図れるかということが常に課題になってくる。例えば、電力送電網、災害時の復旧計画、経済政策、投資などだ。
この課題の解決と大きく関わるのが組み合わせ最適化問題である。例えば「ある地域の全ての都市を巡回して出発地点に戻るときの最短ルート」を求める場合、都市の数に対して計算時間が指数関数的に増大してしまう。
この組み合わせ最適化問題を高速に解く手法として、既に幾つかの事例が発表されているのが量子コンピュータである。ただし、解く問題に制約のある発表が多く、現実問題に広く適用可能な状態ではまだない。今回、富士通研究所が発表した技術は、高速かつ幅広く適用できることから、「量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャ」となっている。
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