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化学プラントでのAI活用、三井化学は15年前から取り組んでいた:スマートファクトリー(3/3 ページ)
NTTコミュニケーションズの「IoT×AI 最新動向勉強会」に、三井化学の十河信二氏が登壇。同社の化学プラントにおけるIoTやAIの活用について説明した。ディープラーニングによる化学プラントの品質予測の共同研究結果を紹介し「15年前に当社が取り組んだニューラルネットワーク技術は確実に進化している」と述べた。
「ブラックボックス化」は防止しなければならない
AIに対する期待の一方で、十河氏はPAへの応用における課題も指摘した。「一般に言われているビッグデータの変数が数十万あるのに対し、化学プラントの学習用データは数千と限られる。より高精度の予測をするには、化学および工学の理論との整合性を取る必要がある。またAIが高精度に予測できるモデルを導き出したとして、その予測が可能な理由が分からない、いわゆる『ブラックボックス化』は防止しなければならない」(同氏)。
また化学プラントの場合、不具合やトラブルをそれほど頻繁には起こさないよう設計になっている。これは、不具合やトラブルに関する学習用データが少ないということであり、予防保全や異常検知を実現する上での課題になっている。十河氏は「ダイナミックシミュレーションの分析結果を使ってAIに学習させることも考えられる。AIとシミュレーション、それぞれが得意なところを組み合わせれば、よりよい結果を得られるのではないか」と述べている。
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