わずか0.02mmのさじ加減で顧客を満足させるねじ金型が世界を目指す:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(10)(3/5 ページ)
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は、直径2mm以下の小径穴と呼ばれるねじの金型を得意にしている金剛ダイス工業の取り組みを紹介する。
行政と連携し、和歌山県の中小企業とともに東京の展示会に出展
金剛ダイス工業が新規顧客開拓のために展示会に出展するようになったのは、同業他社の社長から「展示会に出展するから見においで」と誘われたのがきっかけだったという。
会場に行くと行政単位で出展しているブースがあることに気づいた。なぜ、行政にブースを出してもらえるのか? 誘ってくれた社長に質問し、長野県や徳島県のブースを回り行政の担当者からも話を聞いた。
敬雄氏は、各ブースでもらった資料を持って、すぐに和歌山県の地域振興財団に行ったそうだ。和歌山県が出展しているのなら、自社もそこでPRしたいと考えたからだ。
和歌山県内には、優れた技術を持つ素材産業や中間加工中小製造業は幾つもある。しかし、エンドユーザーが目にするような完成品を世に出している、名の知れた大手メーカーがない。
部品や素材は、外部へアピールしづらい。他県の方から「和歌山には、どんな企業があるの? ほんまの産業は?」と尋ねられたときに「特にないなぁ……」とつい言葉を濁してしまうのは、そのためだ。
地域振興財団体の担当者に他県の取り組みを伝えると、すぐに予算を付けてもらえた。そして参加企業を募り、東京で開催される「機械要素技術展」に集団出展を行うことになった。
2011年に和歌山県が初出展したときは、準備期間が2カ月と短かったため金剛ダイス工業は出展を見合わせた。翌年の2012年からは、継続して出展している。
この集団出展を通じて、県内の機械要素や、金属、樹脂に関する加工技術を持った企業との新たな交流が生まれた。他府県の企業にも交流の輪が広がっている。来場者のニーズをヒアリングすることで、求められている技術の方向性も見えるようになった。
展示会でのPRがすぐに仕事につながるわけではない。けれども、見込み客のリストができ、2年、3年と時間をかけたアプローチで新規取引が生まれてきている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.