わずか0.02mmのさじ加減で顧客を満足させるねじ金型が世界を目指す:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(10)(4/5 ページ)
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は、直径2mm以下の小径穴と呼ばれるねじの金型を得意にしている金剛ダイス工業の取り組みを紹介する。
ねじ金型に求められるさじ加減は家庭の味噌汁と同じ
金剛ダイス工業は、新規取引の場合、先方の工場に行き製品設計のところから立ち会わせてもらえるようにしているそうだ。
A社とB社では、ねじ金型をどのように扱ってものを作っているのか、どういう状況下で作業しているのかが違う。取引先の業務がスムースに回るように、使用される環境を理解してねじ金型を作る。そうすれば、製造上のトラブルが軽減できる。
単に、早く安く図面通りのねじ金型を納めればいいのであれば、価格競争に陥ってしまう。仮に図面上の寸法が同じであっても、取引先が最終的に求めているモノは少しずつ違う。
その数字に表れない微妙なニュアンスを敬雄氏は味噌汁にたとえた。
味噌汁は、日本人なら誰でも飲む。しかし地域によって、米味噌、麦味噌、白味噌、赤味噌と使う味噌が違う。仮に同じ味噌を使っていたとしても、家庭ごとに味噌汁の味は違うだろう。レシピ通りに作っても、ほんの少しのさじ加減で“家庭の味"になる。
味噌汁に“わが家の味"があるように、金型には現場のこだわりがある。「この取引先は、このポイントを気に掛けておけば、現場のモノづくりがうまく回る」、そういったポイントはそれぞれ違うそうだ。
だから、取引先に「このねじ金型をどのように扱うのか?」を確認することが重要となる。ねじ金型が使用される工場を見学し、最終製品のどこにねじが使用されるのかを共有したい。そこをブラックボックスにされてしまうと、同社から提案できることがぐんと減ってしまうからだ。
「お客さんが感じているうちのメリットは、図面にないところをきちんと仕上げている点にあると思っています」と敬雄氏はいう。
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