ADASや自動運転、電動化でトランスミッションはどう変わる?:シェフラージャパン 技術インタビュー(2/3 ページ)
エンジンの高効率化、電気自動車やハイブリッド車などの電動化、運転支援機能での走る曲がる止まるの制御など、トランスミッションを取り巻く環境は変化している。また、ATやMT、CVT、DCT、AMTなどさまざまな種類のトランスミッションが存在する中で、それぞれの採用比率はどう変動していくのか。
MTと運転支援は両立できるか
MONOist ある国内自動車メーカーは自動ブレーキ搭載車にMTを設定していない。両立は難しいのか。
中澤氏 基本的には可能だ。Eクラッチとバイワイヤ技術を上手く使えば成立する。今、そうしたモデルがないのはMT車に自動ブレーキを搭載するのが単純にコストアップになるからだ。MT比率が高い地域のユーザーは、価格の安さや燃費を重要視する傾向がある。走りの楽しさを優先する人は少数派だろう。
MONOist 自動運転が高度になっていくにつれて、トランスミッションの重要性は変わるか。
中澤氏 エンジンやトランスミッションの制御は自動運転であっても重要だ。変な音もしてはいけない。自分で運転している時は、「エンジンはこういう音がする」「トランスミッションはこういう段数」と分かっている。それがドライバーの予想に反すると不快になる。自分が運転しないからこそ気になることだ。人間は普段乗っている時の感覚との違いに敏感だ。自動運転ではないが、例えばDCTやAMTは、MTの運転感覚に慣れている人とそうでない人では感想が随分変わる。
トランスミッションの開発課題
MONOist トランスミッションの今後の競争領域とは。
中澤氏 共通しているのは、燃費改善と小型軽量化だ。フルハイブリッドかマイルドハイブリッドか、電気自動車なのか。電動化がどう進むのかもポイントになる。燃費改善はフリクション低減に尽きるし、小型軽量化は材料技術をどこまで突き詰められるかに懸かっている。
ただ、従来と同じことをしていても、伸びしろはほとんどない。内燃機関については自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)が熱効率50%を目標に、限界を越えようとしている。トランスミッションの効率向上は限界を迎えているのか、原理原則に立ち返って大幅に改善することはできないのか、考えるべき時期に来ているのではないか。
MONOist 改善の“飛び道具”は。
中澤氏 特効薬はなく地道な積み重ねになる。ただ、思い込みの枠を外してみなければならないと考えている。例えば、鉄の部品をプラスチックに置き換えられないかというテーマがある。できない理由は、設備、耐久性、コスト、既存の取引などたくさん挙げることができる。しかし、本当にできないのか、今後の進化を考えるためにも視点を変えるタイミングだといえるだろう。
MONOist 思い込みの枠を外すと何ができるか。
中澤氏 量産できるかどうかは別にして、トランスミッションの技術者が思い描くアイデアはいろいろある。例えば、疲れた時はクラッチを使わず、好きな時にガチャガチャとシフトチェンジを楽しめる3ペダルのMT車があっても楽しいのではないか。コストがかかるが、Eクラッチとアクチュエーター技術、バイワイヤ技術を活用すれば実現は可能だ。他にも、MTとCVTの組み合わせなど、「考えたことがないわけではない」という人は多い。ただ、決して夢物語ではなく、既に部分的に実現し始めている。副変速機付きのCVTやAMTがそうだ。
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