地震大国の地盤調査技術は、宇宙をも目指す――日東精工:オンリーワン技術×MONOist転職(3)(3/3 ページ)
日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第3回。今回は、ねじや自動組立機、計測・検査装置を展開する日東精工の地盤調査機を紹介する。
ユニークな人事評価、広報は社員のやりがいに
人事評価もユニークだ。日東精工には単位制があり、自ら研修を受けたり、改善提案をしたり、また地域活動に参加するなど、自発的な行動によって単位を取得できる。昇格試験を受けるには、20単位取得しなければならない。またいわゆる目標管理は、難易度、努力度、達成度で評価する。安易な目標を達成するより、達成できなかったとしても高い目標に向かって努力する方が高く評価される。「会社はみんなで支えているもの。社員一人ひとりにスポットが当たるようにしたい」(荒賀氏)という考えだ。培ってきたものを大切にする一方で、新しいことにチャレンジする風土を育て、努力する人を評価する仕組みになっているのだ。
地域の人財育成にも長年取り組んでいる。毎週1回、2時間、1年間で、機械や電気を学べる夜間学校「綾部工業研究所」は、同社の子会社でスタートし、昨年50周年をむかえた。現在は一般社団法人として京都府の施設で実施しているが、現在も講師は同社から派遣。述べ1500人以上の卒業生を輩出し、地域の技術の底上げを図っている。
もう一つ忘れてならないのは、広報活動だ。先に紹介した自己啓発本をはじめ、毎月発行しているニュースレター、また同社のゆるみ止めねじ「ギザタイト」を「ゆるまない・集中力持続」のシンボル・お守りとして受験生にプレゼントするキャンペーンも2014年から実施しており、申し込みが殺到する。
広報活動は外に対する企業のPRではあるが、同時に従業員のやりがいにもつながるという。「会社の取り組みを発信して、外から評価されたときに『日東精工で働いていてよかった』と感じるのではないか。社員が自分の仕事や職場に誇りを持って、またがんばろうと思ってくれたら、それは会社にとって大きな意味がある」と荒賀氏はいう。
地盤調査機オンリーワンの日東精工は、全員が企業理念を理解するという強い「地盤」の上に、仕事にも地域活動にも積極的に取り組み、一人ひとりが主役として輝ける会社。同社の存在そのものが、オンリーワンなのかもしれない。
筆者紹介
杉本恭子(すぎもと きょうこ)
東京都大田区出身。
短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。
(取材協力:マイナビ)
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