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地震大国の地盤調査技術は、宇宙をも目指す――日東精工オンリーワン技術×MONOist転職(3)(2/3 ページ)

日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第3回。今回は、ねじや自動組立機、計測・検査装置を展開する日東精工の地盤調査機を紹介する。

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海外へ、宇宙へ

 3代目となる現在のジオカルテには、東京都市大学と、ジャパンホームシールドと同社が共同開発した新たな試験方法「スクリュードライバーサウンディング試験(SDS試験)」を搭載したシリーズがある。SDS試験では、地盤の強度に加え、スクリューポイントが地中に入っていくトルクを計測し、そのエネルギーから土質を推定することができる。トルクの計測やコントロールは、同社の自動ねじ締め機のノウハウが活躍する分野でもある。

 SDS試験は、地面の液状化リスクの調査への適用も期待されている。2011年に大地震が発生したニュージーランドにあるオークランド大学とは、既に共同研究が進んでいる。2015年に開催された「地震と地盤工学に関する国際学会」では、「ジオカルテはニュージーランドの地盤調査に使用できる可能性が高い」との論文が発表され、高い評価を得た。学会をきっかけに、タイのカセサート大学など、他の国々との共同研究も始まっている。

 今後は「正確性やスピードのさらなる向上に加え、より深く、より固い地盤にも対応できるように進化させることで、適応範囲を拡大していきたい」と片山氏。海外との共同研究を足がかりに、「ボーリング調査」や「三成分コーン試験」といった大がかりな方法が主流の国々にも、展開していきたいと考えている。

 さらに同社の技術は宇宙を目指す。JAXA(宇宙航空開発研究機構)の2016年度の研究テーマに「SDSによる月面でも利用可能な地盤調査技術の確立」が採択され、同社も研究チームに参画している。月の地盤調査をジオカルテの技術で行い、月に建物が建つ――なんていうことも、夢ではないのかもしれない。

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JAXAのプロジェクト「宇宙探査イノベーションハブ」の月面地盤調査の研究に参画

社員一人ひとりにスポットを当てる

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日東精工 企画室 室長 兼 監査部 部長の荒賀誠氏

 日東精工は、地域貢献や「人財」育成に対する取り組みも、オンリーワンといっても過言ではない。企画室 室長 兼 監査部 部長の荒賀誠氏は「自分たちにとっては当たり前のこと」というが、その理由は同社誕生の背景を知ると理解できる。

 綾部はかつて養蚕で栄えた街。女性の仕事がたくさんあるのに対して、男性の働く場所が少ない土地柄だった。そこで男性の雇用を作ろうと、地元の有志10数名で立ち上げたのが日東精工である。地域に支えられて発展し、それを地域に還元すること、発展のために人財を育成することは、創業当初からの使命なのだ。

 日東精工には人財育成のための4冊の教科書がある。経営理念の解釈や、プロとしての基礎や発想力、またリーダー向けの教本など、同社が長年培ってきた教育体系をまとめたもので、昇格試験のベースとするなど勉強するための仕組みもある。

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人財育成のための4冊の教科書

 「会社のDNAは、油断すると途絶えてしまうし、言い回しや解釈によっても変わってしまうので、文字で伝えることは非常に大切。時代とともに経営手法が変わっても、軸がブレることはない」と荒賀氏。この教科書のエッセンスをまとめた自己啓発本「人生の『ねじ』を巻く77の教え」はベストセラーとなり、他社での教育や、地元の高校などのキャリア教育にも使われている。

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