生体システムのビッグデータ解析に向け、研究拠点を開設:医療機器ニュース
産業技術総合研究所は、早稲田大学と共同で、「産総研・早大 生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ」を設立した。同研究所が私立大学と共同で設立する、初めての組織となる。
産業技術総合研究所(産総研)は2016年7月29日、早稲田大学(早大)と共同で、「産総研・早大 生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ(AIST-Waseda University Computational Bio Big-Data Open Innovation Laboratory:CBBD-OIL)を設立したと発表した。産総研が私立大学と共同で設立する初めての組織で、早大西早稲田キャンパスに設置される。
近年、バイオ分野に情報技術を組み合わせることで、医薬や食品、化学品分野など、さまざまな産業への応用が期待されている。最近では、実験技術や機器の進歩により、細胞/生体/集団単位でDNA/RNA/タンパク質などの生命データが増加している。これらを有効に活用するために、迅速に結果を示せる情報解析技術の開発が求められているという。
早大は、1細胞単位で挙動を解析するシングルセル解析において、日本最大の技術を蓄積している。また、微生物のDNA情報を収集し、これらを丸ごとシーケンス(配列を決定)するメタゲノム解析や、超高速シーケンサーデータの情報解析技術などにも実績を持つ。一方、産総研は、大規模なゲノム配列を高速・高精度に比較し、遺伝子の持つ機能や疾病要因となっているゲノム上の変異などの知見を効率的に見いだす情報解析技術を有している。
今回、CBBD-OILを設立することで、早大が持つ日本有数の生体システムビッグデータと両者の情報解析シーズ技術を合わせ、生命現象のメカニズムをシステムとして理解し、疾病メカニズムの解明や究極の個別化医療への貢献を目指した研究開発に取り組む。
具体的には、シングルセルデータからの疾病発症メカニズムの解明や微量組織データからの組織・生体モデリング技術の開発、腸内フローラデータからの疾病関連因子同定技術の開発、マリンメタゲノムデータからの新しいゲノム資源発見のためのデータ整備と解析技術開発などを行う。両者は、情報解析技術の高度化により、生体システムの理解と制御を目指すとしている。
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