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外資系製造業が国内生産に踏み切る理由――3Mの防じんマスクの場合:モノづくり最前線レポート(3/3 ページ)
製造業にとって日本国内で生産を行うには一定のリスクが伴う。特に、外資系の製造業であれば、新興国で低コストで生産し、それを輸入販売すればよいので、国内で新たに生産を始める必然性は低い。しかしこのほど、グローバル企業・3Mの日本法人であるスリーエム ジャパンは、防じんマスクの国内生産に踏み切った。その理由とは。
国内顧客の要望を反映した新製品開発も視野に
国産化が軌道に乗ったことで、需要の急増に即応できる体制も整いつつある。「需要急増時には、山形事業所の生産ラインをフル稼働して対応する。それでも足りない場合には、シンガポールや韓国、中国など近隣の生産拠点から調達することになるだろう。国内で生産しているので、全量を輸入しているときよりも、はるかに柔軟な対応が可能になるだろう」(浅野氏)。
さらには、海外で需要が急増した際などに日本から輸出することも可能になる。輸出先の規格への対応が必要になるが、3Mがグローバルで防じんマスクを安定供給する体制の一翼も担えるわけだ。
そして、スリーエム ジャパンの安全衛生製品事業部が今後の展開で見据えているのが、国内顧客の要望を反映した新製品開発だ。浅野氏は「現在、3Mの防じんマスクのラインアップは、Vフレックスを含めて17種類ある。今回の国産化をきっかけに、18番目、19番目の製品を国内で開発し事業化することも視野に入れていきたい」と述べている。
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