クルマづくりに誇りを持てば、不正は起こらないのか:エコカー技術(2/2 ページ)
三菱自動車の燃費不正問題に関する特別調査委員会は、同社に対して実施した調査の結果を報告した。軽自動車4車種をきっかけに明らかになった一連の不正について、2016年4月25日〜7月31日までの約3カ月間で、関係者154人に対し延べ236回の聞き取り調査を実施したという。
1車種の開発中止を決定
身の丈にあった車種展開を進めるため、1車種の開発中止を決めた。2020年までに市場投入する“SUV三兄弟”の次男坊である新小型SUVのプラグインハイブリッドモデルの開発を取りやめる。
長男である「アウトランダー」や、末っ子の次期「RVR」はプラグインハイブリッドモデルを含めて開発を続ける。「地球に優しいクルマ作りをしていくことを考えると、次男坊の開発は中止しても残りの2モデルは残さざるを得なかった」(三菱自動車 副社長の山下光彦氏)。次男坊の新小型SUVについては内燃機関モデルは開発を続ける。
また、この新型コンパクトSUVのプラグインハイブリッドモデルは開発工数の負担が大きかったという。「これをやめないと他の車種に影響が出るという現場の要望を聞いた。また、営業部門に確認すると、事業性と開発の苦労が見合わないことも分かった。工数の負担軽減のために開発を止めて良いと判断した」(益子氏)。
三菱自動車は既に体制変更など再発防止策を発表し実行に移しているが、特別調査委員会は、会社が一体となってクルマを作って売るという意識が欠如していたという点がまだ社内に根付いていると見ている。
同委員会は「不祥事を防げない会社なのは、三菱自動車に一体感がないから。経営陣や役員は開発現場への関心が薄く、働く人たちの思いが一致しているようには見えない。その状態で再発防止策を考え実行しても上手くいくはずがない。同じことの繰り返しになる」と指摘する。
三菱自動車は、SUVと電動車に特別な思い入れを持っているか
特別調査委員会がまとめた調査報告書では、クルマ作りにプライドを持つことが不正防止に重要だと強調している。
「自動車がユーザーにとって特別な魅力を持ち続けるために、自動車メーカーは、ユーザー以上に特別な思い入れを持って、クルマ作りに向き合う必要がある。目指すべき方向が明確に定まっていないと、クルマ作りに関わる人たちが問題に直面したり迷ったりした時に立ち返るべき理念がなくなってしまい、会社全体が迷走する」
「最悪の場合には、利益という分かりやすい目的の追求のために、問題やプレッシャーから目を背け、自動車に対して絶対にしてはいけないことをしてしまう。理念が存在し、共有されていれば、その理念を台無しにするようなことは誰もしない。大好きな自動車にうそをつくことはないのである」
再発防止策の進捗だけでなく、三菱自動車が再出発に当たってどのようなクルマ作りの理念を打ち立てるのか、注目が集まる。
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