3D設計推進者が考える、3D CADについてのあれこれ:3D設計推進者の眼(12)(1/3 ページ)
機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は無償3D CADや、2D CADのデータ保全、異種のデータフォーマット間での受け渡しなど、CADの機能や開発にまつわるさまざまな話題を取り上げる。
今回は、無償3D CADや、2D CADのデータ保全、異種のデータフォーマット間での受け渡しなど、CADの機能や開発にまつわるさまざまな話題を取り上げます。
無償CADは設計現場で使用できるか
現在、3D CADには無償のものから高額なものまで、幅広く存在します。
無償の3D CADでは、STL(Stereolithography、Standard Triangulated Language)データでの出力が可能です。特にアメリカでは、3Dプリンタの普及が目覚ましく、個人が3D CADで設計したものを(むしろデザインと言った方が良いかもしれませんが)、3Dプリンタのネットワークの中で出力して、その製品を受け取るといった有料のサービスが定着しているようです。このような背景から、方々で無償の3D CADが開発され、個人ユーザーを中心に普及していったのでしょう。
またファブラボ(FabLab:世界中に存在する3Dプリンタやカッティングマシンなどの設備を備えたワークショップ)の活動も広まってきています。このような施設では高額な3D CADの購入や維持管理が難しいこともあり、無償の3D CADが活用されているという話を聞きます。
無償の3D CADの中には、例えば、商用使用が認められていないものや、機能も限定されているものもあります。私が属する装置産業においては、企業で設計にこれを使用することは、私には考えづらいです。
なお無償の3D CADについては、MONOistに掲載された無償3D CAD関連の記事を読めば、種類やそれぞれ特徴が大体つかめるのではないでしょうか。
子ども向けの無償アプリ
私も参加した「SOLIDWORKS WORLD 2016」(2016年2月、米国テキサス州ダラスで開催)では、「SOLIDWORKS App for Kids」という開発中(イベント開催当時)のアプリケーションの紹介がありました(関連記事:未来のエンジニアを育てる「SOLIDWORKS Apps for Kids」)。
1人の少女が自分のクマのぬいぐるみ用のオリジナルの帽子を、簡単なコマンドでデザインをして、その完成品が宅配便で送られてくるというストーリーでした。アプリケーションを使用して、自分の持つイメージをモデル化するということは、3D CADの使い方とよく似ています。
このような子どもたちも、個人ユースとして無償の3D CADを使用してデザインをするようになるかもしれません。またその子どもたちが、創造的な設計ができる将来の設計者の候補になっていくのかもしれません。そんなことを考えるとワクワクします。
有償の3D CAD
有償の3D CADについては、10万円前後のローエンドCAD、100万円前後のミッドレンジCAD、1000万円以上のハイエンドシステムが存在します。
私が使用しているiCADとSOLIDWORKSはミッドレンジに相当します。私が実際に使用、セミナーで聴講やハンズオンなどで触ったことのある製品は次のようになります。
- CATIA(ダッソー・システムズ、フランス)
- Creo(PTC、アメリカ)
- NX(シーメンスPLMソフトウェア、アメリカ)
- SOLIDWORKS(ダッソー・ システムズ・ソリッドワークス、アメリカ)
- Inventor(オートデスク、アメリカ)
- Solid Edge(シーメンスPLMソフトウェア、アメリカ)
- TOP Solid(Missler Software、フランス)
- iCAD SX(iCAD、日本)
- Micro Calum(トヨタケーラム、日本)
- IRONCAD(Iron CAD、アメリカ)
私自身が初めて使用した「ME10」はHewlett-Packard(アメリカ)が開発したものでした。ME10は、後にCoCreate(ドイツ)に引き継がれ、現在は「Creo Element Direct Drafting」(PTC、アメリカ)という製品になっています。
ミッドレンジ/ハイエンドの3D CADですが、その製品を見て分かるようにその開発元は、多くが欧米系の企業が占めています。CADメーカーが欧米に集中している理由は、古くからCADを使用してきた航空機産業をはじめとするハイテク産業が、欧米を中心に発展してきたことの現れだと考えます。
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