デンソーの「ダントツ工場」は人と志をつなげるIoTを目指す:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/3 ページ)
デンソーは、IoT(モノのインターネット)を活用することによって、2020年の工場の生産性を2015年度比で30%向上させるプロジェクト「ダントツ工場」に取り組んでいる。このダントツ工場の取り組みをけん引する、同社生産革新センター DP-Factory IoT革新室 室長の加藤充氏に話を聞いた。
日本版第4次産業革命のポイントは「人づくり」
MONOist 工場におけるIoT活用では、ドイツのインダストリー4.0や、米国のインダストリアルインターネットなどが先行しています。これらをどう見ていますか。
加藤氏 インダストリー4.0のように定型に合わせる手法がうまく働くのは、マイナスから基準値に上げる時だろう。基準値から上げる、上げる速度を高める時には足かせになる可能性がある。
デンソーとしては、プラットフォームありきではなく、ヒューマンセントリック、アプリケーションセントリックの考え方を適用した、成長する「DENSO IoTプラットフォーム(仮)」を検討している。もちろん、ITベンダーお任せで構築するのではなく、当社もしっかり開発に関わる。
国内にない技術もあり得るので欧米の知恵も活用する。ドイツでは研究機関と連携してインダストリー4.0を学んでいるし、米国でも大学との共同研究でインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)に関わっている。国内のIndustrial Value Chain Initiative(IVI)にも2015年度から参加している。
インダストリー4.0は、コネクティビティの標準化を重視しているようだ。その一方で、2016年4月開催の「ハノーバーメッセ2016」では、ビッグデータやAIという言葉はほとんど見られなかった。米国のIICは幅広くやっているが、注力ポイントはビッグデータ分析、マイニング、ディープラーニングになる。
ハノーバーメッセ2016では、集中か自律分散、機械が応え機械がどう動くかというコンセプトの展示が多かった。デンソーはこれを人のレベルにまで落とし込む。日本のモノづくりが強いのは人づくりに拠るところが大きい。機械だけでは閉ループになってしまうが、それを開ループにして人が介在するようにすれば、より良いカイゼンのサイクルを回せるはずだ。
インダストリー4.0が重視するコネクティビティ、IICが重視する分析を、機械ではなく人に適用する。日本版第4次産業革命はそこがポイントになるのではないだろうか。
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