空気清浄機が蚊を取る? シャープが狙う新市場:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(6)(6/7 ページ)
シャープが2016年4月に発売した「蚊取空清」は、蚊取り機能を持つ「世界初」の空気清浄機である。なぜ空気清浄機に蚊取り機能を持たせたのか、開発にはどのような苦労があったのか。小寺信良氏が探る。
日本での需要予測は弱気だったが……
―― 2016年4月から日本でも販売が開始されました。ASEAN向けの商品を日本でも展開しようと思われたのは?
冨田 ちょうど2年前に、代々木公園でデング熱の問題が発生しましたよね。あれも蚊の問題でした。あのニュースを聴いたときに、日本でもきっと需要が広がるんじゃないかと思いまして。
―― もちろん日本でも蚊の問題はあります。小さいお子さんの居る家庭に注目すれば、まさに空気清浄機ニーズと重なるところも大きいですよね。
冨田 私は、日本でも売れます、マスコミも注目してくれますと(社内に)言ってたんですね。しかし問題は、今空気清浄機の需要が踊り場的に停滞してることなんです。
2011年に年間300万台のわずか手前、297万台まで行ったんですが、2015年度は200万台ぐらいしか行ってないんです。最近は空気の環境の問題って、あんまりないじゃないですか。以前は、新型インフルエンザだったり、PM2.5だったり、乾燥がすごく続いたりしていたんですが、最近はそういうことがないもんですから、あんまり関心がなくなった。
そこで、デング熱の蚊の問題を絡めて日本で出せば、需要が活性化できると考えていたんです。ところが新しい商品ってネガティブな意見も出たりしますので、需要が読みにくいんですね。そうなると営業サイドが弱気になる。
ですから生産計画はすごく低かったんです。月産3000台でスタートしたんですが、ある意味季節商品なので、シーズンなんて1年のうち半年もないじゃないですか。半年売ったって1万8000台。品薄になっても知らないよっていったんですけど。
そんな状態で2016年3月17日に記者発表をしたら、案の定すごく評判が良くて、マスコミにもテレビにもいっぱい紹介して頂いて。白物家電ではあんまり予約販売はしないんですが、やってみたら発売まで1カ月ぐらいあるのに、予約だけで2000台超えたんです。
それを見て営業サイドも流通サイドもびっくりして、これは売れるんじゃないかとコロッと変わりましたね。そこからです、製品が足りないのは。今3倍以上、月産1万台ぐらいに増産してますが、それでなんとかこのシーズンを乗り切っていこうと。
―― ASEAN向けと日本向けは、同じものなんですか?
冨田 本体機能は同じなんですが、シートに蚊がたくさん取れ過ぎると気持ち悪いという方のために、日本向けだけシートを折り畳んで捨てられるようになっています。ASEANの場合は、平たい3枚つづりシートで、1カ月ごとにめくってめくって、最後に捨てると。一方日本はそこまで大量の蚊がいないので、1枚で2カ月持つように変えました。シーズンで2枚か3枚購入すれば済むでしょう。
それから日本向けだと、花粉運転モードがあって、通常よりちょっと強力にファンを回します。これがASEAN向けでは、Hazeモードとして使われているわけですね。
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