空気清浄機が蚊を取る? シャープが狙う新市場:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(6)(5/7 ページ)
シャープが2016年4月に発売した「蚊取空清」は、蚊取り機能を持つ「世界初」の空気清浄機である。なぜ空気清浄機に蚊取り機能を持たせたのか、開発にはどのような苦労があったのか。小寺信良氏が探る。
「蚊取空清」の構造と原理
では実際に「蚊取空清」こと「FU-GK50」の実物を見てみよう。空気清浄機と言えばほとんど白ばかりだが、ボディーが黒なのは蚊が好む色だからだ。これまでのシャープの製品同様、背面全体から吸気する構造は変わらないが、蚊が好むサイズの穴が設えてある。
内部には蚊が好むUVライトが仕込まれている。ブルーに光っているのは人間に点灯が分かるように付けられたダミー光源で、実際にはUVライトは人間の目には見えない。
これらの工夫で蚊を近くまで引き寄せたあと、吸引力を使って蚊を吸い込む。フィルター側ではなく、背面カバーの方に粘着シートが張ってあり、吸い込まれた蚊は逃げることができずに気流に翻弄されているうち、粘着シートにくっつくという仕組みだ。
フィルターに蚊が貼り付くのだと勘違いしている人も多いと聞くが、実際にはフィルターと向かい合わせになっている背面パネル内側に粘着シートがある。
―― 既にASEANでは2015年から販売されてますが、反応はいかがでしょう?
冨田 実は先ほど話した研究所の方のご家庭で、モニターをして頂きました。おばあちゃんがいらっしゃるんですが、お孫さんが遊びにくると、この家では蚊に刺されるから嫌だと言って、遊びにこなくなって悲しいということだったんですね。
そこにこの商品が来たわけです。職員の方は仕事柄、結構いろんな蚊取り商品を試したが、大体効いた試しがないと。これもきっと取れないだろうと思って置いてみたら、蚊が激減した。お孫さんも遊びにくるようになって、すごくおばあちゃんが喜んでくれたと言っていただきました。
もう1つ良かったのが、マレーシアって“Haze(ヘイズ)”の問題があるんですね。Hazeとは煙害のことなんですけど、インドネシアでは野焼きをするんですね。あちらにはパームの木とかいろいろあるので、ものすごい煙が出るんです。それが風に乗ると対岸のマレーシア、シンガポールにも流れてくる。すると中国のPM2.5なんて比じゃなく、学校も休みになるぐらい、空が真っ暗になるらしいんです。
その際にも空気清浄機のおかげで、非常に空気がきれいでよかったと言ってもらえました。われわれの狙い通り、まずは蚊取りで興味を持って頂いて、最終的には空気清浄機の良さを知ってもらえた。
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