自分が良いと思っても、その人にとっても良いとは限らず――自社に適した3D CADとは:3D設計推進者の眼(11)(4/4 ページ)
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は「自社に適した3D CAD」について考えてみる。
*4 「パーツもアセンブリも設計者の設計意図を履歴として残しながら、モデリングする方が良いと思わない?」
「履歴を持っている=設計意図が分かる」というわけではありません。ヒストリーCADのパーツのモデリングの手順が設計意図として分かる手順になっているのか、アセンブリの拘束条件が設計意図として分かる内容なのか、関係式も上手く設計情報を表現しているのかということになります。例えば、ある拘束条件を外したらアセンブリや関係式にエラーが表示されることはよくあります。
一例ですが、私は構造解析などのシミュレーション(CAE)を行うことが多く、その場合は、解析モデルとなるアセンブリを詳細設計モデルから編集することがよくあります。
この場合は、不要なパーツの削除を行うことや、パーツ形状を複雑なものから簡単な形状に変更することも多いのですが、この作業を行うとアセンブリのエラーが表示されることが多くあります。これを回避しようと履歴から設計意図を読み取ろうとしますが、分からないことも多くあります。
またフィーチャーを駆使して複雑な形状をモデリングしている場合もあり、このような場合は編集よりもパーツを描き直して、再度アセンブリ構築をした方が早いことがあります。
最近では3D CADに親子関係が分かる機能が実装されだし、解決策も見いだしやすくなりましたが、だからといって、3Dモデルから設計意図が十分理解できるとはいえないですね。
「なぜ立ち上がらなかったのか」
先ほどの会話の中での問題点に触れましたが、あくまで「3D CADを導入したけど立ち上がらなかったのはなぜか」が問題です。
この問題が明らかにならないのであれば、ツールを入れ替えたところで、問題解決にはならないでしょう。登場したBさんも、「なぜ立ち上がらなかったのか」を考えて、調べてくれるのだと期待しています。
3D CAD導入がうまくいった例
次に私の経験から、「なぜ立ち上がらなかったのか」とは逆に、「なぜ上手くいったのか」をお話しします。
1.3D CAD導入チーム(3人)を現場の設計者によって構成した。
このチームは中堅レベルの設計者によって構成されました。強調したいのは、これまで2D設計を行ってきた設計者自身であるということです。このチームが先行して運用を開始していきます。設計人員が一度に運用開始するのではなく、このチームが先行することで、設計部門へ集中していた負荷が分散できました。
2.3D CAD比較検証(ベンチマーク)を行った。
比較検証では定量的な評価が必要です。ベンチマークによって選ばれたものも、そうでなかったものも、この作業で機能を知ることができたのです。
3.フィーチャベースのCADを導入するにあたり、設計者が考えるパラメータをその運用に落とし込むためのコンサルティングを、オペレーション習得と同期を取って実施した。
3D CADを運用する上で、どんな設計ができるようになっていきたいか、これをオペレーションを学ぶ作業と同時に行うことが必要です。ちなみにオペレーションだけであれば、よほどの問題がなければ、どんな3D CADでもマスターできないことはありません。私の会社でも、3D CADに慣れない人でもiCAD SXの操作を習得できています。
4.3D CAD運用手順書を作成した。
CADの特性を理解することで、設計者が標準的な操作できるようになりました。モデリングの方法、パーツモデルの構造、アセンブリの構成といったものを理解できなければこの手順書を作成できません。
これらのことがあって、3D CADの立ち上げが上手くいったのだと思っています。
次回は、3D CAD推進者の私の主観から、さまざまな3D CADを紹介します。
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