卵細胞の因子を用いて、高品質のiPS細胞を高効率に作製:医療技術ニュース
慶應義塾大学は、卵細胞にのみ発現するタンパク質「H1foo」を用いて、従来の方法よりも高品質なiPS細胞を効率良く作製することに成功した。
慶應義塾大学は2016年5月27日、卵細胞のみが持つ新しい因子を用いて、従来の方法よりも高品質なiPS細胞を、より均一かつ高効率に作製することに成功したと発表した。同大学医学部の福田恵一教授らの研究グループによるもので、成果は同月26日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版で公開された。
iPS細胞は、さまざまな細胞に分化する能力(多分化能)を持つが、ES細胞に比べて多分化能が劣るほか、作製されたiPS細胞の特性にばらつきがあることが知られている。また、iPS細胞作製に汎用される「c-Myc」はがん遺伝子のため、腫瘍発生の懸念があるなどの課題があった。
今回、同研究グループは、卵細胞にのみ発現するリンカーヒストンと呼ばれるタンパク質「H1foo(エイチワンエフオーオー)」に着目。H1fooを、iPS細胞作製時に導入する4つの遺伝子のうち、がん遺伝子のc-Mycを除く、Oct4/Sox2/Klf4の3つと共にマウスの分化細胞に発現させ、iPS細胞を作製した。その結果、iPS細胞の作製効率は、3つの因子だけの場合に比べて約8倍に高まった。
さらに、3つの因子だけでiPS細胞を作製した場合、多能性遺伝子「Nanog」を高発現する質の良いiPS細胞コロニーの作製効率は約50%だが、H1fooを加えると90%以上に上昇した。このH1fooを含めて作製したiPS細胞は、培養皿上で胚様体と呼ばれる組織へ分化する能力がES細胞と同等に高く、iPS細胞間での分化能のばらつきも減少した。
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