FFの軽商用車は誰に向けたものか:車両デザイン(2/2 ページ)
FFの軽商用車の需要は今後増えていく――。ダイハツ工業が発売したFF車の軽商用バン「ハイゼット キャディー」は、月販1000台を見込む。現行のFR軽商用車「ハイゼット カーゴ」ほどの積載量を必要としない配送や、軽乗用車を商用として使う事業者など、軽商用車のライトユーザーを狙う。一方で、従来のFR軽商用車の需要も底堅く推移すると見ている。
軽乗用車やFR軽商用車ではなくハイゼット キャディーを
ハイト系/スーパーハイト系の軽乗用車ではなくハイゼット キャディーを選ぶメリットとしては「商用用途のための荷室になっているという点がある。荷室フロアには樹脂を採用して掃除しやすくした。また、床板は取り外し可能で、床下のアンダートランクを活用して背丈のある荷物も積むこともできる。樹脂の活用とフラットな荷室は、商用仕様のハイゼット キャディーの強みだ」(同氏)という。
また、「ハイゼット カーゴの最大積載量を持て余している人や、軽乗用車を商用に使っている人の需要を取り込めれば月販1000台は高望みな数字ではない。FF軽商用車の需要は今後拡大していくだろう」(中島氏)。
FF軽商用車を投入するのは、軽キャブバンや軽ボンネットバンの乗り心地に対する不満を解決するためでもある。
乗ると分かる、乗用車ベースのありがたみ
従来の軽商用車のようにキャブオーバーのレイアウトで荷室の広さを追求する必要がないため、ハイゼット キャディーはエンジンを運転席の前方に配置することで乗り心地の改善が可能になった。
ダスキンの女性社員は、ハイゼット キャディーの製品企画のヒアリングに協力するまではハイゼット カーゴを運転していた。「ハイゼット カーゴの乗り心地の悪さを意識したことはなかったが、ハイゼット キャディーを使ってみると運転席への乗りやすさなど違いが見えてきた。毎日乗るなら乗り心地の良い方を選びたい。製品企画への協力が終わって、ハイゼット カーゴに戻らなければいけないと思うと少し残念だった」とFFとキャブオーバーの違いを語った。
ハイゼット キャディーの乗員室フロア高はハイゼット カーゴよりも71mm低い360mm、シート高は同じく25mm低い750mmだ。花キューピットの女性ドライバーは「この数cmの差は大きい。よじ登る感じがせず、スカートでも気にせずに乗り降りできる」と話す。
この他にもキャブオーバーのFR軽商用車は、シートリクライニングができない点や足元の狭さなど、荷室の広さを優先したことによってドライバーの快適さが犠牲になっているという。「乗用車感覚で乗ると不便に思う場面は多いかもしれない」(中島氏)。
FR軽商用車のラインアップは無くさない
ハイゼット キャディーを新たに投入したダイハツ工業だが、荷室使用率や平均積載重量が減少傾向にあることを踏まえて、今後はFR軽商用車を無くしてFF軽商用車に一本化する計画なのだろうか。
中島氏に尋ねると「ハイゼット カーゴは残る。積み荷の少ないユーザーが増えて荷室使用率や平均積載重量の平均値は下がってきたが、一定数のヘビーユーザーは変わらずにいる。1.8mの長さを超える長尺の積み荷や、畳やふすまといった幅と長さのある荷物はハイゼット カーゴでなければ積めない。キャブオーバーで荷室長を確保したFR軽商用車も重要なラインアップだ」と答えた。
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