富士通テンがミリ波レーダーの開発を加速、2018年に第3世代へ進化:クローズアップ・メガサプライヤ(3/3 ページ)
富士通テンは、先進運転支援システム(ADAS)に用いられる77GHz帯ミリ波レーダーモジュールの有力企業だ。2003年に国内で初めて自動ブレーキを搭載した「インスパイア」に採用されるなど、現在までに累計100万個を出荷している。自動運転技術の開発が加速する中、同社のミリ波レーダーモジュールはどのような進化を遂げようとしているのか。
自動運転技術におけるミリ波レーダーのメリット
富士通テンは、ADASに用いるセンサーとしてミリ波レーダーだけを供給しているわけではない。トヨタ自動車の車両に採用されている「マルチアングルビジョン」のように、車載カメラを用いた技術も有している。
鵜野氏は「ミリ波レーダーだけ、もしくは車載カメラだけといったように、個別のセンサー技術だけでは、今後のADASの進化や開発が加速する自動運転技術に対応できない。当社としては、ミリ波レーダーと車載カメラのセンサーフュージョンが重要になると考えている」と述べる。
同社は2015年12月、AS技術部内に、センサーフュージョンを専門的に扱うセンシングシステム開発室を開設した。「センサーフュージョンの開発は、自動車メーカーではなくティア1サプライヤが担当することになる。自動車メーカーは、センサーフュージョンで得られた情報をどう扱うかにシフトするのでは」(鵜野氏)。
自動運転技術を実現するセンサーとして、ミリ波レーダーと車載カメラの他に、ライダー(レーザースキャナー)も有力候補に挙がっている。富士通テンはライダーを取り扱っていないが、これら3種類のセンサーをどのように見ているのだろうか。鵜野氏は「まず、ある1つの方式のセンサーだけでADASや自動運転システムを構築することはないだろう。そして車載カメラは形状認識のために必要になる。では、車載カメラと組み合わせるべきは、ミリ波レーダーなのか、ライダーなのか。そこで重要になるのが外界の情報をいかに確実に検知するかだろう。車載カメラとライダーは光を使っている点では同じ。ミリ波レーダーは電波なので検知原理が異なる。ミリ波レーダーは検知分解能でライダーに劣るといわれているが、79GHz帯のようにワイドバンドになれば検知分解能を上げられる。上下方向の検知も実はアンテナ設計によって対応することが可能だ」と分析する。
自動運転技術に対応するV-ICT事業を推進
このようにミリ波レーダーや車載カメラといったセンサー、カーナビなどの車載情報機器を持つ富士通テンだが、これらを組み合わせた自動運転技術への取り組みはどのように進めているのだろうか。
鵜野氏は「当社は、他のティア1サプライヤのように動力制御システムを持っているわけではないので、自動運転車の試作やその実証実験を通してのアピールはできない。だが自動車メーカーがやりたい制御に必要な情報を出したり、ドライバーに情報を出したりする製品や技術を持っている。そしてこれらの情報を統合し、富士通のセンターに統合することもできる。センターを介して他の車両のデータを活用することもできる。この車両側とセンター側を連携させたセンシングプラットフォーム構想があり、これをV-ICT(Vehicle Information and Communication Technology)事業として展開する方針だ」と述べている。
実際に同社が2016年4月に行った組織改定では、高度道路情報システム(ITS)関連を扱うITS技術本部、運転支援システム関連を扱うAS技術本部、先行開発を担う先行開発企画部という、自動運転技術と関わりの深い3つの研究開発部門を統合したVICT技術本部を新設した。このVICT事業を加速するための体制といえるだろう。
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