ミリ波レーダーSiGeチップ2社が大手ティア1サプライヤと連携、ADASをより安価に:車載半導体(1/2 ページ)
自動車の先進運転支援システム(ADAS)のセンサーの1つに、77GHzの周波数帯を用いるミリ波レーダーがある。この77GHz帯ミリ波レーダーの低価格化をけん引する、SiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスを用いた送受信ICを手掛ける半導体メーカー2社が、それぞれ大手ティア1サプライヤと連携して、さらなる普及を目指そうとしている。
自動車への採用が拡大している先進運転支援システム(ADAS)。自動ブレーキや車線維持、アダプティブクルーズコントロールといった機能により、自動車を運転する際の安全性と利便性を高めてくれる。
ADASにおいて車両の前方を検知するセンサーの1つに、77GHzの周波数帯を用いるミリ波レーダーがある。高速走行時に重要な長距離の検知に秀でているとともに、昼夜の関係なく利用でき、雨や雪、霧などの天候にも左右されにくいことを特徴としている。
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループ、Daimler(ダイムラー)、BMWといった大手自動車メーカーは、主に高級車向けのADASに77GHz帯ミリ波レーダーを用いてきた。
現在、この77GHz帯ミリ波レーダーの低価格化が進んでおり、大衆車への採用が一気に拡大する流れになっている(関連記事:普及の鍵は、ミリ波レーダーの低価格化:大衆車にも求められる「予防安全」)。
この流れをけん引しているのは、SiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスを用いた77GHz帯ミリ波レーダーの送受信ICを製造しているInfineon Technologies(インフィニオン)とFreescale Semiconductor(フリースケール)だ。
ボッシュ/フォルクスワーゲンとタッグを組むインフィニオン
インフィニオンは2015年7月28日(欧州時間)、77GHz帯ミリ波レーダー送受信ICの出荷個数が累計で1000万個を突破したと発表した。初出荷から約6年間で達成した数字だが、今後は小型車や中型車にも77GHz帯ミリ波レーダーを使ったADASの採用が広がり、2016年には年間で1000万台が搭載するようになるという。
同社は2014年の77GHz帯ミリ波レーダー送受信ICの世界シェアで50%を確保したとしている。この数字を基にすると、2016年は500万台の車両がインフィニオンの77GHz帯ミリ波レーダーを用いたADASを搭載することになる。世界全体の年間自動車生産台数が約9000万台なので「世界で生産される自動車の20台に1台が、インフィニオン製の77GHz帯ミリ波レーダー送受信ICを用いたADASを搭載する」(同社)というわけだ。
インフィニオンが強気の数字を出す背景には、同社の77GHz帯ミリ波レーダー送受信ICを採用する大手ティア1サプライヤのRobert Bosch(ボッシュ)と、ボッシュの77GHz帯ミリ波レーダーを広く採用するフォルクスワーゲングループの存在がある。
ボッシュの77GHz帯ミリ波レーダーモジュールの歴史。2009年生産開始の「LRR3」からSiGeプロセスを用いた送受信ICの採用を始めた。2013年生産開始の「MRR Front」ではさらに小型化が図られ、より多くの車両に搭載されるようになった(クリックで拡大) 出典:ボッシュ
フォルクスワーゲンは、2012年末に発売した7代目「ゴルフ」から、ボッシュ製の77GHz帯ミリ波レーダーを用いる自動ブレーキ「Front Assist Plus」を標準装備するようになった。さらには、主力車種であるゴルフに加えて「ポロ」などにもFront Assist Plusを標準装備する展開を拡大している。
年間の自動車生産台数が1000万台を越えるフォルクスワーゲングループの車両への77GHz帯ミリ波レーダーの標準装備が広がれば、インフィニオンの言う「2016年に500万台」という数字は十分達成可能だろう。
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