HILSの仕組み:いまさら聞けないHILS入門(2)(4/4 ページ)
車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回は、HILSがどのような仕組みで動作しているかについて解説します。また、さまざまな車両の制御システムごとにいかなるHILSシステムがあるのかについても見て行きます。
HILSのサイズ
HILSが対象とする制御システムの種類や規模は多種多様ですので、HILSコンピュータのサイズもさまざまです。最小規模であれば、リアルタイムCPUとインタフェース回路を1枚のボードに搭載してPCの中に組み込むものが有ります(図4の(1))。小型のHILSコンピュータであれば、手のひらに乗る程度の小さなユニットにCPUと入出力モジュールを持つものがあり、小規模なシステムのHILSに向いています(図4の(2))。
HILSシステムとしてパッケージ販売されているものの多くは、HILSコンピュータとインタフェースユニットを9インチラックに組み込んだタイプです。ラックの高さは60cm程度の机上に置けるものから、高さ2m程度のフルサイズまであります(図4の(3))。自動車用としての最大のものは、車両に搭載される100個以上のECUをまとめてテストできるビークルHILSと呼ばれるもので、フルサイズラックを数台組み合わせて、1部屋を丸ごと占有するものまであります(図4の(4))。
次回は、HILSを構築するためのHILSの要件仕様の検討に向けて、HILSの入出力インタフェースのポイントとなるセンサー、アクチュエータの構造と機能について分析したいと思います。
筆者プロフィール
高尾 英次郎(たかお えいじろう) 「HILSとTestの案内人」
1950年生まれ。岐阜大学機械工学科卒業。三菱重工で大型船のエンジン・推進装置などの修繕業務を担当の後、三菱自動車(現三菱ふそうトラック・バス)に転籍。エンジンの燃費向上・排出ガス低減研究、車両の燃費向上研究を10年余および電子実験、電子設計などを20年余担当。ITKエンジニアリングジャパンを経て、現在はHILSとHILS Testにフォーカスしたコンサルティングを行っている。
HILSとの関わりは、バス用の機械式自動トランスミッション開発中に、ECUのソフト検証用として1990年にMS-DOS PCを使ってHILSをゼロから自主開発して以来のもの。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「いまさら聞けないHILS入門」
- HILSとは何か
最新の高級自動車は200個ものコンピュータを搭載しているといわれる。ECU(電子制御ユニット)と呼ばれるこのコンピュータが、正しく動作するかどうかを試験するテスト装置として注目を集めているのがHILSだ。本連載では、HILSの導入や、HILSを使ってECUのテストを行うための基本的な知識の提供を目指す。連載第1回は「HILSとは何か」だ。 - いまさら聞けない モデルベース開発入門
あなたは人に「モデルベース開発」を正しく説明できるだろうか? プロセス改善手法の1つであるモデルベース開発の概念や特徴について解説 - NIが自動車向けテストシステムの事業展開を拡大、「第3のHILS」も
計測モジュール「PXI」やグラフィカルシステム開発環境「LabVIEW」を展開するNational Instruments(NI)が、自動車向けテストシステムの事業展開を拡大している。富士重工業やコンチネンタルなど大手企業の採用を獲得すると同時に、今までにない「第3のHILS」を投入する方針だ。