シャープの“膿”は出し切れたか、鴻海傘下でもエネルギーとディスプレイに不安:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
シャープの2015年度(2016年3月期)決算では、売上高が2兆4615億円、営業損失が1619億円、経常損失が1924億円、当期純損失が2559億円という厳しい結果になった。ただし「鴻海グループとの戦略的提携により、強固な取引関係の確立と財務基盤の強化を図る」(シャープ社長の高橋興三氏)ことで、事業の安定的な継続が可能になるとした。
「鴻海の出資で新しいステージへの道筋を付けることが私の責任」
2016年度の業績予想は鴻海グループの出資完了後に公表するとした。これは現時点において戦略的提携によるシナジー効果を具体的に算定が困難なためだ。しかし今後の見通しの大枠については、高橋氏と報道陣との質疑応答の中から垣間見えた。
まずコンシューマーエレクトロニクス事業については「デジタル情報家電、通信、健康の3分野のうち、赤字になったのはデジタル情報家電だけ。中国販売子会社の販促費用を処理したので今後は黒字になる」(高橋氏)とした。
エネルギーソリューション事業については「ポートフォリオとバリューチェーンが長すぎるので、一部を外に出すなどの対応が必要かもしれない。具体的な検討は鴻海グループからの出資完了後になるが、“長すぎる”という認識は共有している」(同氏)。
そしてディスプレイデバイス事業は「約1200億円の営業損失のうち約半分はたな卸資産の評価損だが、残りの半分をカバーするには高付加価値の中型への移行を早める必要がある。そのためにも鴻海グループとのシナジーが重要になってくる」(同氏)とした。
黒字化が見通せているコンシューマーエレクトロニクス事業に対して、エネルギーソリューションとディスプレイデバイスの両事業については、鴻海傘下となって以降も厳しい事業運営を迫られる可能性が高い。
報道陣からは高橋氏の経営責任を問う声が多数上がった。高橋氏は「これまでの任期の3年間のうち、1年目を除いて2年連続で赤字になったことは大変申し訳なく思う。自主再建はできないと判断し、鴻海グループの出資を仰ぐことになったが、シャープという形は残った。鴻海グループの出資を得て、シャープの新しいステージへの道筋を付けることが私の責任だ」と述べた。
また自身の手で現在進めている、「提携効果の最大化・早期黒字化に向けた3つの構造改革」のうち、「成果に報いる人事制度の確立」については一定の成果が得られたという見方を示した。「リテンション(人材定着のための試み)に備えるべく、給与を戻す、賞与を戻し、一般社員も利用できるストックオプション制度を導入する方向性を定めた。1年前から検討してきたもので、中長期的に優秀な人材を残す一助になると考えている」(同氏)。
これらの他、鴻海グループの出資条件の見直しについては「ない」(同氏)、さらなる大規模な人員削減についても「すぐにやることはないだろう」(同氏)と回答している。
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