車載ソフト更新時間が10分の1に、ディーラーにも行かなくていい:車載ソフトウェア
日立グループは、自動運転車やコネクテッドカーのECU向けに、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)を行うソリューションを開発した。新旧プログラムの差分を抽出して車両に配信することにより、従来比で更新にかかる時間を10分の1に短縮する。2018年の製品化を予定している。
日立製作所と日立オートモティブシステムズ、クラリオンは2016年4月28日、自動運転車やコネクテッドカーのECU向けに、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)を行うソリューションを開発したと発表した。新旧プログラムの差分を抽出して車両に配信することにより、プログラムを全て書き換える従来の手法と比較して更新にかかる時間を10分の1に短縮できるという。更新ソフトウェアの送信を行うOTAセンターから車両側のシステムまで日立グループがワンストップで構築し、一貫したセキュリティ性も実現する。2018年の製品化を予定している。
OTAの流れ
OTAセンター向けのシステムを日立製作所が、車両全体のシステムは日立オートモティブシステムズが主導して開発した。更新データを受信する無線通信機(テレマティクスコミュニケーションユニット)は、クラリオンが手掛けた。
開発したソリューションのOTAは次のようなプロセスで進む。まず、OTAセンターのシステムで、新旧プログラムの差分を抽出し、暗号化する。この差分データは、テレマティクスコミュニケーションユニットで受信し、セントラルゲートウェイを介して更新対象のECUに送信される。各ECUには差分データと旧プログラムを基に新プログラムを復元して更新するソフトウェアを搭載しており、これによってプログラムの書き換えを実行する。
OTAセンターと車両のセントラルゲートウェイ、差分データを受信する無線通信機は、配信するデータの暗号化や相互認証を行うことにより、情報の漏えいや改ざん、なりすましを防止し、安全なソフトウェア更新を実現するとしている。日立グループでは、既にセントラルゲートウェイなどの実機を車両に搭載した試作システムを開発し終えた。
このソリューションは、新プログラム全体ではなく差分データのみを車両に配信することで、通信の負荷を低減し更新時間の短縮を実現している。現在、自動車販売店で行うソフトウェア更新は、差分更新ではなくプログラムを全て書き換える手法が採られている。アップデートの内容によっては更新に数十分を要する。
OTAによって、自動運転システムの実用化後に想定される頻繁なソフトウェア更新への対応を可能にする。車両の販売後も品質や付加価値を向上できる他、自動車販売店に搬入せずに不具合や新機能の追加などの対策を遠隔で迅速に行える。
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