自動車メーカーも取り組み始めた取扱説明書Web化の意味:製造業ドキュメンテーションの課題(1)(3/3 ページ)
製造業における、設計書や取扱説明書といった「ドキュメント」の作成は、多くの企業で属人的手工業の状態のままである。本連載では、さまざまな識者が「製造業ドキュメンテーションの課題」を明らかにするとともに、その解決を模索していく。第1回は、「取扱説明書」「サービスマニュアル」に代表される「マニュアル」を取り上げる。
マニュアルはコストセンターからプロフィットセンターへ
現時点においてマニュアル制作はコストセンターだ。マニュアルは製品を購入したお客さまへのサポートに加え、メーカーとして製造物責任の所在を明らかにするための、法規的な対応の行為でもある。
しかし最近、Webマニュアルをマーケティングに活用しプロフィット化する試みも出てきた。Webコンテンツで顧客体験を生み、コンバージョン(売り上げ)につなげていくCXM(Customer Experience Management)への活用だ。CXMは、双方向のコミュニケーションが可能なWebであるからこそ実現できる。アクセス解析、リード情報の管理、顧客のサービス履歴の管理など、さまざまな活動を通して、企業側が顧客体験の構築を促していく。
前述のマツダ ロードスターのWebマニュアルは、公開後1カ月で5万アクセスを記録したという。購入を検討するユーザーは、カタログやショールームでは分からない細かなスペックをWebマニュアルで確認し、購入を決めるわけだ。ヤマハも、プロオーディオ機器の一部の取扱説明書をWeb化する取り組みを始めている。機能差の分かりづらいプロ向けミキサー機の商品価値をユーザーに届ける試みだ。
「マツダ ロードスター」の電子取扱説明書。同車は「2015-2016 日本カー・オブ・ザ・イヤー」に加え、2016年の「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)」を受賞しているが、この電子取扱説明書も、テクニカルコミュニケーター協会から「マニュアル オブ ザ イヤー2015」を受賞している(クリックでWebサイトへ移動)
一方で製品の修理のためにメーカーやサービス事業者が利用するサービスマニュアル(修理方法マニュアル)は、製品マニュアルのように法規の縛りがないため、提供方法に自由度が高い。タブレット端末だけでの提供をはじめたメーカーもある。
マニュアルは、取扱説明書としてのガイドライン、コンテンツの可用性を担保しながら、一方でマーケティングコンテンツとしての付加価値も高める必要がある。マーケティング、開発、サポート、営業の活動も関わることから、組織の変化も求められる。
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