ハウステンボス、広大な私有地でロボット社会の入り口を「こじ開ける」
ハウステンボスに、料理長がロボットのレストランなどを含めた「ロボットの王国」がオープンする。ロボットによる集客だけではなく、テーマパークの生産性向上やロボットが身近な社会の実現も視野に入れての取り組みだ。
ロボットが接客する「変なホテル」を運営する、長崎ハウステンボスのロボット導入が加速、体験型ミュージアムやロボットが調理するレストランなどを備えた「ロボットの王国」がオープンする。同社代表取締役社長の澤田秀雄氏は「世界一生産性の高いテーマパークをロボット技術で実現する第一歩」と語る。
この「ロボットの王国」はハウステンボスが展開する「光の王国」「音楽とショーの王国」「花の王国」「ゲームの王国」「健康と美の王国」に続く「王国シリーズ」の第6弾となるもの。既に稼働している宿泊施設の「変なホテル」に加え、ショップ併設の体験型ミュージアム「ロボットの館」、調理および接客ロボットが導入される「変なレストラン」で構成される。
先行して2015年7月より営業を開始した変なホテルはフロントやロッカー、手荷物運搬などへ積極的にロボットを導入。2016年3月には2期棟が完成し総客室数は144室となり、収容人数は増えたが、スタッフ数は当初の30人から12人に減っている。最終的には9人にまで減らす予定だ。澤田氏は「来場者にロボットの王国を楽しんでもらうことはもちろんだが、“世界一生産性の高いテーマパーク”がもう1つのテーマ」とロボット導入の目的を語る。
テーマエリア運営だけではなく、ハウステンボスとしても全自動バスの導入などロボットとロボット技術の導入を積極的に進める。そして将来的には現在1300人を超えるハウステンボス従業員の半数を、より創造性に求められる“ヒトならではの仕事”に転換する考えだ。この背景にはハウステンボスが「私有地」であることが大きく関係している。
ハウステンボスは152ヘクタールと十分な敷地面積を持ち、なおかつ、私有地であるため、特区指定など行政の許可を得ずともロボットやパーソナルモビリティなどの運用実験が行える。「ロボットはハードウェアとソフトウェア、それに運用の3要素から構成されるが、ハウステンボスにはこの“運用”を自由に行える条件がそろっている。申請や決裁を待っていては技術革新に取り残される」(澤田氏)
このハウステンボス全体を「ロボット実証実験場」と位置付け、ロボットの市場投入を加速させる構想は既に発表されているが(関連記事:ハウステンボスが「ロボット実証実験場」に、年間300万人来場者からニーズ探る)、同社最高技術責任者の富田直美氏はこの取り組みによって「ロボット社会の入り口を“こじ開ける”」と意欲的だ。
富田氏はハウステンボスという“場”を日本のみならず世界に向けアピールすることで世界中からロボットを集めるという。加えて澤田氏も「ハウステンボスに来たら世界中のロボットとロボット技術を実感できる、そんな場所にしたい」と意気込む。ただ、サービスロボットの導入効果は定量化しにくいため、富田氏はどのような検証と測定が効果的なのかの実証もこの取り組みにおけるテーマであると話す。
ハウステンボス「ロボットの王国」は2016年4月29日にプレオープン、同年7月16日に本オープンする。
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ハウステンボスはメインスタッフがロボットのホテルを開業する。アルデバランやココロ、安川電機などの協力で主要業務にロボットを投入、ロボットとは「どこか温かみのある」(同社)会話も楽しめる。