米国が推進するリスクベースのモバイルヘルスアプリ開発:海外医療技術トレンド(13)(3/3 ページ)
世界各国でモバイルヘルスアプリケーションの開発に向けた競争が激化する中、規制当局が要求する品質/安全管理対策の水準も確実に上がっている。開発者はどのような点に注意したらよいのだろうか。
FDAが推奨するリスクベースのモバイルヘルスアプリ開発
他方、FDAも、「デジタルヘルス」「ヘルスIT」の分野で、「医療機器」「非医療機器」双方を含むモバイルヘルスアプリケーションの品質/安全管理対策を推進している。例えば、2012年7月に成立した「FDA安全・イノベーション法(SIA)」に基づき、ONCおよび連邦通信委員会(FCC)と共同で、「ヘルスITのためのリスクベース・フレームワーク」を開発し、2014年4月に公表している(関連情報)。
表1は、FDAフレームワークのマトリックスを示している。「ソフトウェア製品の目的」「想定ユーザー」「損害の重大度」「危険な状態の発生可能性」「ソフトウェア運用、データ、含まれるコンテンツプロバイダーの透明性」「危険な状態を低減する能力」「ソフトウェアおよびその保守の複雑度」「実装とアップグレードの複雑度」「トレーニングと使用の複雑度」「より包括的なソフトウェア/ハードウェア・システムの一部としての使用」「ネットワーク接続性、基準、セキュリティ」の各項目について、「低リスク」「中リスク」「高リスク/一層の注意」の3段階で評価する仕組みになっている。
FTC、FDAとも、モバイルアプリケーションの使用端末を、スマートフォン・タブレットからモノのインターネット(IoT)へと拡張させた品質・安全管理対策の取組を本格化させようとしているが、リスクベース・アプローチの考え方は首尾一貫している。
筆者プロフィール
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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